2018年8月31日から熱海で開催された「TRPGフェスティバル2018」(参考記事:【TRPGフェス】ロードス島コラボのWARPが盛り上げた開会式、長老・鈴木銀一郎先生のビデオメッセージも!)の魅力の1つは、まだ発売されていない新作を体験できることでしょう。公式コンベンションとあって、発売日未定の作品も含め、各社の新作体験会が目白押しでした。その模様とともに、判明したゲームの内容をまとめてご紹介します!

■有名同人サークルが商業デビュー! 『銀剣のステラナイツ』などKADOKAWA系の新作2点の体験チャンスも

『朱の孤塔のエアゲトラム』『黒絢のアヴァンドナー』といったSF的オリジナルTRPGを手掛けてきた同人サークル「どらこにあん」が、ついに商業デビューする作品がKADOKAWAから9月20日に発売される『銀剣のステラナイツ』。人類最後の楽園となった積層都市を舞台に、異世界空の侵略者を迎え撃つ騎士ステラナイトとなって戦うTRPGです。

といっても、その内容は戦闘よりもロールプレイ重視。PCは戦場に立つブリンガーと、それを支えるシースのペアの複数組から成るのですが、ブリンガーとシースをそれぞれ別のプレイヤーが担当する仕組み。つまり2人プレイヤーで遊ぶなら、それぞれが互いのブリンガーとシースを担当することになるわけです。さらに、他人のロールプレイや選択が良かった時に「ブーケ」というリソースをGM・PLともに提供できるルールもあり、ロールプレイは加速してきます。実際、今回の体験会でも、当初はロールプレイが苦手と言っていた参加者が、PCへの情熱が高まって、積極的にロールプレイするように変化する様も見られました。

デザイナーの瀧里フユ先生たちがGMを担当。『銀剣のステラナイツ』だけでなく、同人作品『黒絢のアヴァンドナー』も体験できた

KADOKAWAからの新作はもう1作、それが人気漫画のTRPG化作品『トリニティセブンTRPG』です。発売は2019年予定とまだ先ですが、そのテストバージョンをいち早く体験できました。プレイヤーが担当するのは、王立ビブリア魔導学園の学生。原作同様に、7つの罪(テーマ)に基づく魔法を操り、活躍できました。

盛況だった『トリニティセブンTRPG』卓。原作者のサイトウケンジ先生も来場し、夜には冒険企画局の齋藤高吉先生と「Wサイトウトークショー」も開催していた

■D&Dの系譜に連なる、もう1つの正統派ファンタジーTRPGがついに正式版に

海外のファンタジーTRPGというと今年は『D&D5版』『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー2版』の話題を耳にしがちですが、忘れてならないのが『パスファインダーRPG』です。すでに『パスファインダーRPG ビギナー・ボックス』こそ2017年末に発売されましたが、ルールの簡略版とあってその正式版の発売が待望されていました。今回のイベント、「ようこそ、パスファインダー協会日本支部へ」では、その正式版である『パスファインダーRPGコアルールブック』に基づくセッションを体験できました。

コアルールブックでは、クラスが4種から11種に増え、戦闘での補助ルールが充実して戦術的自由度が上がっただけでなく、膨大な呪文や装備、はてはダンジョンや罠などの精巧なルールなど、幅広い冒険がサポートされるとのこと。国内のゲームデザイナーに根強いファンが多いD&D3.5版をベースにモダナイズした内容は、ダンジョンファンタジーTRPGをコアに遊びたいファンにとっては、ストライクゾーンど真ん中の作品と言えるでしょう。こちらはほぼほぼ制作が完了していると言い、発売日の正式決定が待ち遠しいところ。

ミニチュアと共にプレイされていた『パスファインダーRPG』。ミニチュアがあるだけで、ワクワク感が段違い!

■公式コンベンションでも発売前の新作が続々!

公式コンベンションも負けていません。アークライト・新紀元社主催の「R.CON」では、開催6卓のうち半数が新作という挑戦的な構成でした。

その1つが、齋藤高吉先生の『獣ノ森』。残念ながら今回のTRPGフェスでの先行販売には間に合わず、もう少し制作に時間がかかるとのこと。『キルデスビジネス』『ダークデイズドライブ』とぶっ飛んだ印象の作品を手掛けてきた齋藤先生が「真面目なファンタジーRPGも作れるところを見せたい」と制作したという本作は、異世界転移物でした。

PCは呪いの仮面に取りつかれ、魔法やモンスターの存在する異世界での冒険を強いられる現代人。転移先の“森”には無数のモンスターが徘徊しており、戦いを繰り広げながら森からの脱出を目指します。装備は現代で入手したものが主になるらしく、ホームセンターで手に入れたチェーンソーを持ったホッケーマスクのPCとかが出来上がる模様。齋藤先生、これいつものでは。

クリーチャーの徘徊する森から、現代人は生きて脱出できるのか。齋藤先生のGMのもと、死闘が繰り広げられた

冒険企画局からはもう1作品。雑誌『Role&Roll』で発表されてtwitterを沸かせた、コンシューマーゲームとのコラボ作品『ディスガイアTRPG』です。日本一ソフトウェアから発売されている魔界戦記ディスガイアが、ついにTRPGに。人気のシミュレーションRPGシリーズだけに、どんなTRPGになるのか注目している人も多いことでしょう。

発売未定のため、まだ制作中のルールでのセッションでした。PCはいずれも魔王であり、同盟を組んでより強大な敵と戦います。ただ、魔王ということで、すんなり協力とはいきません。それぞれの意見を調整するため、セッションでは何度も行うのが「会議」です。PCに設定した性格と合致した選択に投票したり、多数派に回ったりするとリソースが得られる仕組み。参加者は和気あいあいと魔王同士のいがみ合いを楽しんでいました。

デザイナーの河嶋先生が一般参加しているためか、GMは平野累次先生。カジノ魔界や貧乏人魔界など、個性的な魔界が次々と誕生して、笑いを呼んでいた

制作団体は変わって、チーム・神我狩(仮)の番棚葵先生が手掛ける新作が『神聖課金RPG ディヴァイン・チャージャー』。会場の物販コーナーでアーリーアクセス版が購入できたこともあり、タイトルと相まって話題になっていた作品です。

魔神と戦う人類に、創造神が与えた奇跡の箱、「ガチャ」。PCは中でもレアである「神器」を高確率で引くことのできる稀有な才能を持つ存在です。本人の能力自体は普通のため、神器の能力に頼って戦うことに。ただ、神器は壊れることもあるため、強い神器を得るためにも何度も課金してガチャを回す必要があります。ソーシャルゲームの流行もあってガチャの魅力は健在で、参加者も結果に一喜一憂しながら、嬉しそうに課金ガチャを回していました。

世界を救うために、課金ガチャを回すしかない。後ろめたさゼロで回せるガチャに、参加者も楽しげ。GMはデザイナーの番棚先生

また、TRPGフェス会場の先行発売『ゆうやけこやけ』も、インコグ・ラボ主催の「インコグ・ラボコン」で参加できました。会場の物販コーナー3日間でも一番の売り上げだったという同作。最新版ルールは、ほのぼのという難しいテーマを巧みに表現した旧版ルールを生かしつつも、テーマのわりに重めの処理だった印象判定を省略するなどの変更を加え、より遊びやすくなった印象を受けます。初日開催には、アナログゲーム紹介漫画『スピタのコピタの!』の緑一色先生も参加しており、その漫画化が『Role&Roll』に掲載されそう。こちらも楽しみです。

このように新作を次々に体験できたTRPGフェス。盛りだくさん過ぎて目移りしてしまいますが、どれも発売が待ちきれませんね! そのためにも今から英気を養わねば──

ん、見慣れない掲示が……さっきもあったっけ……?

ゲリラで新作体験会だって!?

■ゲリラであったよ! 冒険企画局の新作3点を先行体験!

というわけで、2日目の深夜にいつのまにか開催されていた冒険企画局の「深夜のゲリラ体験会」もありました! 3卓はいずれも満席と、参加者の皆さんの目ざとさには驚かされます。ちなみに冒険企画局は、1日目の夜にも近藤功司局長がゲリラトークショーを開催(リンク:近藤局長ツイート)するなど、良い意味の驚きを提供していた印象があります。

まずは、KADOKAWAから10月20日に刊行予定の『迷宮キングダム』卓。GMはデザイナーの河嶋陶一朗先生です。この少し前まで一般参加を満喫していたはずなのに、いつの間に。

もともと2004年にホビーベースから刊行されたファンタジーTRPGであり、ご存知の方も多いでしょう。舞台は、災厄によって空も山も街も全てダンジョンに変わってしまった世界、百万迷宮。PCは小さなコミュニティ「王国」の運営者となり、ダンジョン探索による領土拡大や国家の運営に奔走するというゲーム。最新版では、現代に向けて遊びやすくルールをリファインされたほか、フルカラーの豪華な冊子になることが明かされています。

スマホを見ながらプレイヤーに指示する河嶋先生。アマデウスのようにサポートアプリが用意されるのかも?

続いて、古町みゆき先生の商業ゲームデザイナーデビュー作となる『ストラトシャウト』。古町先生はもともとニコニコ動画での生放送で人気を博し、今は冒険企画局のメンバーとして『キルデスビジネス』のサプリメント『アマデウス』のデータ集を手掛けるなど、多彩な活躍をしてきました。

その初作品となる『ストラトシャウト』は、なんとバンド物TRPG。魔法や異能のような超常的要素はなく、あくまで音楽で“たった1人”のターゲットの心を震わせることを目的にするという実にエモいTRPGです。中でも特徴的な点が歌詞カード(オリジナルでも既存作品のものでもOK)。セッション中、歌詞カードの内容と合致した展開やロールプレイをすることで、クライマックスの演奏でより心に響く演奏ができるのです。歌詞でシナリオの方向性をコントロールできるほか、解釈の余地を使って大喜利的に遊ぶこともできるようです。発売は年末を予定しているとのこと。

意欲作の『ストラトシャウト』をGMする古町先生。深夜のライブは、ターゲットの心を掴めるのか

最後は、『カードランカーRPG』『ヤンキー&ヨグ=ソトース』などを手掛けてきた平野累次先生の新作。まだタイトル未定という新作は、これまで手掛けてきたサイコロフィクションシリーズではなく、オリジナルルールによるサスペンス物でした。

PLは1~2人という少人数で、探偵とその助手を担当。探偵は天才で判定に成功しやすいものの奇行にも走りやすい「異常な癖」を持っており、捜査をぶち壊しにするリスクも負っています。助手は、探偵に振り回されつつも奇行をコントロールして、事件の解決を目指すというもの。発売は2019年と先になるようですが、独特なシステムになりそうで、これも楽しみです!

平野先生の新作、探偵サスペンス物TRPGのセッション風景。PCは探偵と助手で、使用するキャラクターシートもダイスも違っていた

■海外未訳TRPGはまだまだ豊か! 海外インディーズゲーム体験会に見た可能性

おおっと、忘れちゃいけません! 個人的にも大注目だったのが、『フィアスコ』など海外インディーズゲームの翻訳を手掛ける「ハロウ・ヒル」主催の「海外インディーズゲーム体験会」

登場人物が次々と殺され、最後の生き残りがその元凶と対決するという『The Final Girl』、王の死による内戦の只中で、貴族の若者となって陰謀や交流を繰り広げる『The King is Dead』など、国産ゲームには見ないタイプの作品がズラリ。

盛況だった「海外インディーズゲーム体験会」。すぐ満席で、参加希望を断ったほどだったという

ご興味ある方は、主催団体が開催レポートも上げているので、こちら(外部サイト)をぜひご覧になってみてください。

このように日本・海外、商業・インディーズといった区分関係なしに面白そうな作品が次々と登場しています。私も頑張ります。皆さん、時間を作って、遊びましょう!


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