ユーザーはそのシステムに対してどういった箇所を通じて「面白い」と感じるのでしょうか。色々な要素が積み重なって感じるそのシステムの面白さ。その一部を文章化した記事となります。
TRPG every day マスコットキャラクター

私達がTRPGを遊ぶ時、何をもって楽しい、面白いと感じるのでしょう。その思考の道筋を辿るのはとても大変です。その中で、私、aoringoは「コンセプトとルールの一致」というテーマでTRPGシステムは勿論ゲーム全般を見ることが多いと気がつきました。

コンセプトとルールの一致、それは一体なんなのか。私なりに文章化してまとめました。一TRPGユーザーが何をもってそれを「楽しい」と感じるのか参考になれば幸いです。

もちろん人によって様々な価値観や哲学があります。それも前提にしてご覧ください。

コンセプトとは「そのシステムで何が出来るのか?」という問いに対する答え

私達は好きなゲームを説明するときに、開口一番で何を伝えますか? 「吸血鬼であるGMと本気で殴り合いをする」「ゾンビ少女になって終末世界を旅する」「正体不明のよくわからない不気味ななにかの存在を感じつつ探索する」他にも色々。人に興味を引いてもらうために、私達はそのゲームの「伝えたいところ」「何が出来るのか」をぐぐっと凝縮して紹介します。それこそがコンセプトです。

思えばそこにファンタジーやSFといったゲーム自体のジャンルが入り込まない事もしばしばあります。そのシステムに設定されたコンセプトに沿ったジャンルが自然と設定されていますから、わざわざ口に出す必要はないのです。

「このシステムではこんな事ができちゃうんだよ!! だからやろう!」

そこには確かな「遊ぶ」という原動力が伴っています。

原作有りのTRPGシステムなら、原作を再現するというコンセプトで世界観やルールが構築されているべきです。対立がありえるものなら自然と対立状態に移行できるルールが設定されているでしょう。学園物なら学校生活や恋愛要素を満喫できるルールが整備されていて当然です。コンセプトに沿ったルールがそのシステムに配備されている。出来る事が自然に出来るシステム。

やれる事が出来ると、私達は楽しくなります。ロールプレイもはかどります。逆に、そこで躓くと私達はストレスを感じます。

コンセプトは世界観やシステム、シナリオの隅々まで自然と浸透します。小人になって冒険する「ウタカゼ」というシステムではチュートリアルシナリオの冒頭に「背よりも高いススキノ畑の森を横目に歩いていると」とあり、キャラクターシートには背丈が実寸で描かれています。ウサギを代表とした小動物に騎乗して戦う事が出来ます。蛇やクモといった強大な敵と勇気や、愛情や、知恵を使って戦います。そして、その世界では人間は既に滅んでいて名残がそこここに残っていると少しだけ物悲しい背景もスパイスとして効いています。

こういうコンセプトだから、当然世界観はこうだし、ルールもこうなるし、戦闘もこういう感じになるよね、シナリオを作るときも自然と流れはやっぱりこうだし・・・。とキチンと繋がると、遊んでいて引っかかることもなく思う存分遊べます。

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ルールは「したいこと」を出来るように設定されるコンセプトの支え

ゲームの軸となるのが「コンセプト」、それを実際にゲームプレイとして支えるのが「ルール」です。

ルールが無ければゲームは遊べません。「こう遊びましょう」というコンセプトを伝えた所で、私達プレイヤーはルールが無ければ困ってしまいます。また、簡単にコンセプトを無視もします。そういう生きものです。

「終わった世界を放浪し、狂気にさらされすり減っていく少女ゾンビ達、それでも世界は容赦しない」というハードなコンセプトを持つ「永い後日談のネクロニカ」では、狂気的なシチュエーションに出会うと狂気判定を行い、失敗するとキャラクター達が狂気に陥ります。そういうルールがあるから、自然と私達はシナリオに狂気的なシチュエーションを盛り込みますし、狂気的な事がおこるんだなと思いながら遊びます。「こういうゲームだからこう遊んで」ではなく「こういうルールがあるからどう遊んでも結果的にコンセプト通りに遊べるよ」がルールのあるべき姿です。

ゲームを遊ぶ為にルールはあります。ルールだけを組み立てても軸が無ければ歪に仕上がります。

余計なルールが多く、遊んでも結局一部しか使わなかった。そういうTRPGシステムを実際に見かけたりします。コンセプトから外れたルールは、そのシステムにはむしろ邪魔な存在になりかねます。

「あれも出来る、これも出来る!!」とルールの増改築を繰り返してよくわからない状態になっていき、気がついたら「あれ? これって面白いの?」ふと我に返る。オリジナルシステムを作る人にとってはよくある事ではないでしょうか。

例として上手く出来ているのが「アジアンパンクRPG サタスペ」でしょうか。世界最大の犯罪都市と化した「大阪」で、金のためなら人助けから戦争までする現代の冒険者「亜侠(アジアンパンク)」となるTRPGです。これはまさに「サタスペ」という世界観で出来る事を全てするために様々なルールが搭載されたシステムです。戦闘をするためにスクエアマップ式戦闘があると思えば、カーチェイスするためのルール、NPCを誘惑するためのルール、調査をするためのルール、ルール、ルール。

その全てが「サタスペ」という独特の世界観、コンセプトを遊ぶ為に設定されています。私はこれを遊んだ時に「増改築を繰り返された旅館みたいだ」と感じましたが、遊んだ後にはしっかりとサタスペをプレイできたいう感想を持てました。どんなにルールがあろうとなかろうと、コンセプトのために機能するべきです。

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コンセプトとルールの合致

どんなに抽象的だろうと、簡単だろうと、遊びにはコンセプトとルールはあります。

「鬼ごっこ」は文字通り、誰か一人が鬼となり、他の人を追いかけて、捕まえれば鬼役を交代する流れを繰り返す遊びですね。「鬼から逃れる」というコンセプトを再現もしくは沿うようにルールがきちんと設定されています。

これこそがコンセプトとルールの合致です。

ルールはコンセプトのためにあり、コンセプトはルールのためにあります。二つを分けて考えてはいけません。ここが一緒になっていないと私達はゲームをきちんと楽しく遊べません。

遊んだ後で「なんでこのルールはあるんだ? むしろ邪魔じゃないか?」と思う物はありませんか? それはコンセプト合致していますでしょうか。コンセプトを邪魔しているならそのルールは本当に要らない可能性があります。しかし、コンセプトを再現するためにあえて邪魔になるようルールを組んでいる場合もあります。そうした場合、そのルールがそこにある意味が見えてきます。

「ログ・ホライズンTRPG」はコンピュータゲームのジャンルの一つであるMMORPGに取り込まれた人々の冒険を描く原作を再現したTRPGです。

このシステムの戦闘はスクエア方式ですが、「ヘイト」という概念があり、敵はこれを指針にして動くので盾役のキャラはわざとヘイトを高めたりして戦闘の流れをコントロールします。MMORPGの特性を非常に良く再現していますね。

一方で、敵は移動してきたキャラクターがその場所を通り抜けようとすると移動を阻害する事が出来ます。大半のMMORPGでは敵の周りを自由に動けたりすり抜けたり無視したりできますので、これはMMORPGの再現になっていないと言えるでしょう。

この二つのルールはしかし、「ログ・ホライズン」を再現する上で非常に重要なルールになります。MMORPG世界に取り込まれた人々は、MMORPGの概念に強い影響を受けます。しかしそれと同時に、事象は現実と同じように動作します。敵は質量を持ち、通り抜けできない物体としてそこに存在しますし、意思を持ち自由に動きます。二つのルールはしっかりと「ログ・ホライズンを再現する」というコンセプトを見事に果たしています。

印象に残るTRPGシステムというのは、ただただ優れたルールや世界観があるからではなく、そこに軸としたコンセプトがあって寄り添うルールがあるからこそ印象に残ります。

世界観だけじゃだめです。特徴的なルールだけでもダメ。クオリティの高いシナリオだけでも勿論。表紙や中身のアートワークだけだと言わずもがな。ジャンルは方向性の話でしかありません。何を持って面白いと感じるのか、そのシステムでしか味わえない物は何かを考えて構築する必要があると思います。

ルールを遊んでコンセプトは理解できますか? コンセプトを理解してルールがきちんと頭に入りますか?

貴方の作るシステムにはコンセプトはありますか。それに寄り添うルールはありますか。TRPGシステムを作る、もしくは批評する一つの基準としてみてください。

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