多彩な企画が展開した、大型コンベンション「TRPGフェスティバル2018」(8/31~9/2)ではTRPGやボードゲームだけでなく、多数の体験型イベントでも盛り上がりました(リンク:参考記事)。「LARP」や「WAR→P!」といった作品世界に入り込む企画と違う方向性を打ち出したのが、インコグ・ラボ主催による「インコグ・フェスティバル」です。
事前の募集では、先行発売の『ゆうやけこやけ』をはじめ、『永い後日談のネクロニカ』『でたとこサーガ』『鵺鏡』『ドラクルージュ』『コロッサルハンター』と、世界観もルールもまるでバラバラな作品世界が全て関わるという狂気の闇鍋「やりたい放題のカード収集型ライブRPG」と銘打たれていました。
当日に用意されたのは、6つのテーブルと、壁面に張り出された無数のペーパー。これらを前に、江島博代表が掲げたのは、前年のTRPGフェス参加者なら見覚えのあるであろう「市民冠」──もしや!
そう、グループSNEの友野詳先生が身に着け(リンク:友野先生ツイート)、閉会式で冒険企画局の河嶋陶一朗先生の手を経て、なぜかインコグ・ラボの江島代表に押し付け託されたという伝説の一品です。江島代表は「これほどの名クリエイターの手を渡ってきた市民冠は、言わば宝具! これまでのインコグ作品世界を集めて、最近流行りのガチャやコレクター要素をぶちこめば、かつてない名作が生まれるに違いない!」と市民冠の力を解き放ったのです。が──
いくら何でもオーバーフロー。名作ができるどころか、市民冠とルールが各世界にバラバラに飛び散ってしまったというのです。このままでは異物を取り込んだ各世界も崩壊してしまう……そこで、救世主として異世界召喚されたのが参加者たるプレイヤーという設定。
実際のゲームでは、プレイヤーは各世界を回って、協力者(カード)を集めるとともに、分散したルール「理の断片」を収集。全体目標として、世界救済のカギである「記念碑」ボードに各世界のキャラクターの名称を記載すること、個人目標としてカードの組み合わせで決まる最高得点を目指すという仕組みでした。
ルールをデザインした保田琳先生によると、ルールが分散しているという形式は「ハグル」というゲームが基になっているそうです。ハグルは、色の異なるチップと、ルールの一部が記載されたヒントカードを参加者に配り、個別にチップやヒントカードを交換して、チップが最高得点となる組み合わせを目指すという多人数ゲームです。
ただ、今回のイベントでは4~5人のパーティー制にした他、「クエスト」という要素を追加。クエストは、各世界のキャラクターによる依頼や試練などが記載されています。ただし、どこの世界なのか、誰がクエストのメインキャラクターなのかは隠されており、クエストの文面から読み取る必要があります。さらに、判定方法やボーナスとなるカードの情報も隠れており、謎解き・推理的な要素も組み合わされていました。
クエストにクリアすれば、そのクエストにまつわるキャラクターのカードを1人1枚ずつ入手できる他、成否に関わらずその作品世界のカードを手に入れる「ガチャ」を1回引けました。さらに理の断片もパーティーで1枚手に入るため、クエストに次々と挑戦することが重要に。
クエストに挑戦するだけでなく、定期的に「情報交換タイム」が設けられ、パーティーの枠を超えて情報共有を促す仕組みもありました。実際、全体ミッションの失敗に関わりそうな理の断片を手に入れた人が「●●をすると、世界が崩壊するそうです。みんな、気を付けてください!」「カードのキャラクター名に誤字が含まれてるみたい!」などと声をかけ合い、積極的に情報共有していた姿が印象的でした。
3時間という開催時間があっという間に過ぎ、開催された2回ともに好評のうちに終わったライブTRPG。2回目の最高得点者は、ほしいカードセットをもらえるだけでなく、市民冠を譲渡され、新たな皇帝として称えられるというサプライズもありました。
ただ、「好きなデザイナー(皇帝候補)に冠を譲ってもいい」というルールもあったため──
「私は『深淵』ってゲームが大好きなんです。ぜひ朱鷺田先生に!」
『深淵』といえば、3版の発売が待望される朱鷺田祐介先生のダークファンタジーTRPG(リンク:関連記事)。しかし、この勝利者の純粋な願いが、新たな“TRPG戦国時代”を招くことになるとは、この時は誰も知る由もありませんでした。その波及の詳細は、後日アップする閉会式記事にて!(まさかの続く)⇒閉会式に続きました!(リンク:関連記事)
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