本日、9月4日からはJGC(ジャパンゲームコンベンション)が開催されます! 出版社などの主催により年に一度開催される宿泊型コンベンションは、まさにお祭り。毎年新作発表や先行販売、ここでしか聞けないデザイナーさんのトークショーなどTRPGファン注目のイベントです。ただし、TRPGの宿泊型コンベンションはJGCだけではありません。今年6月20~21日に開催された「TRPG文華祭」がその一つ! こちらはTRPGを愛する有志によって主催され、プロ・ファンの垣根なくTRPGやアナログゲームを満喫しよう!という草の根的なイベント。今更ながら当日の模様をレポートします!
TRPG every day マスコットキャラクター

TRPG文華祭の会場となるのは、東京大学の目と鼻の先にある文京区本郷の旅館、鳳明館。歴史あるたたずまいは学生時代の合宿所のような懐かしさを感じさせます。

JGCでは事前の予約ができたり、開催するセッションが予告されますが、文華祭はよりコンベンションに近いイベントです。当日、GMに立候補したゲストや参加者が思い思いのTRPGを取り上げ、その場で参加者を募ります。

卓分けの様子

順番にセッション卓の参加希望者をチェック。募集人数より多ければ無慈悲なじゃんけんです。ちなみに卓分けはゲストのはずの朱鷺田祐介先生が仕切ってくれました。この贅沢さ&緩さが文華祭らしい

取り上げられるシステムは、新旧さまざまです。古いものではトラベラー(1984年)やファー・ローズ・トゥ・ロード(1993年)から、でたとこサーガ(2015年)と今年発売されたばかりのもの、深淵第3版ホライゾンブレイク改など開発中の作品、同人作品など、文華祭以外ではおそらく体験できない作品もあります。もちろん、クトゥルフ神話TRPGインセインといった近年のコンベンションで人気のシステムもありました。

GMにとってある意味恐ろしいのが、参加希望者が少ないとGM参加を取り下げることになる容赦ない卓決めです。ゲストであるプロの方でもGMが成立せず、アマチュアのGMに参加者が集まって溢れてしまうこともあるという、実に真剣勝負な代物。逆に言えば、素直に自分が遊びたいものを遊ぼうという参加者が多い印象があります。

ファーローズ・トゥ・ロード

カードが魔法やセッション展開を誘うのが特徴的な『ファーローズ・トゥ・ロード』

[ちょっとだけ卓紹介]

もちろん私も一般参加して、がっつりセッションを楽しんできました! 初日は『ファー・ローズ・トゥ・ロード』

いわゆる剣と魔法のファンタジー世界を舞台にしたTRPGです。魔法を誰でも習得することができる一方、カードやダイスによって覚えられる魔法や使い勝手が変化するため、非常に神秘的な存在になっています。魔法のコストとなるのが喜怒哀楽などの感情というのも個性的なところ。GMは本作品の開発に関わっていた司史生先生。実は初体験だったのですが、カードを効果的に使うルールが実に印象的で、丁寧なルール解説のおかげもあってスムーズに堪能させてもらいました。

二日目に参加したのは、開発中の同人TRPG『オタク戦線異状あり』

オタク戦線異常あり

イベント会場内を回って、より高い満足度を目指す同人TRPG『オタク戦線異常あり』

超巨大オタクイベント「コミック・ゴンドワナ」を舞台に、さまざまなタイプのオタクとなって目当ての本を購入したり、イベントを妨害する邪神やネクロマンサーと戦ったりします。何を言ってるか分からないと思いますが、本当にそうなんだから仕方ない。GMは一般参加していた漫画家のあわじひめじさん。以前から同人TRPGを作成していて、こかげ書店でもオリジナル同人TRPG『敗犬は荒野を駆ける』を委託・販売中です。今回の作品も頒布も楽しみ!

こうしたセッションをイベントの主役としつつ、夜に開かれるトークショーや企画イベントも魅力の一つ。今回の企画イベントは、西洋ファンタジーの格好をして、実際に体を動かしたり、五感を使ったりしてRPGを楽しむLARP(Live Action Role Playing)をテーマにしたセミナー「LARP×TRPG」でした。講師のレイムーンLARPさんは、日本で唯一定期的にLARPを遊んでいる実績あるサークルさんです。

海外では人気のLARPですが、日本ではなかなか遊べる機会が少ないこともあって関心が高く、多くの参加者が集まりました。講師たちが盗賊や魔法使いに扮している時点で、TRPGにはないLARPならではの雰囲気が漂い、印象的でした。まずはLARPとはどういうものかというチュートリアルに始まり、続いてホワイトボードを扉に見立てた「ダンジョンの探索風景」、講師同士による「モンスターとの戦闘」などが実演されました。

LARPの武器の扱い方一つとっても、TRPGにないものばかりでした。当然ですが、LARPでは怪我をしないように危険性の低いゴム製武器などを用いるため、本物のように重くありません。軽く振り回せます。しかし、参加者が大きな武器を使うなら、現実には身体が武器の一振りに影響されるはず。こうした重さを演じてリアルさを増すことがLARPを上手く楽しむテクニックだそうです。TRPGとは違った楽しみ、奥深さを感じます。

セミナーで特に盛り上がったのが、参加者に実際にLARPを遊んでもらう体験コーナー。観客から選ばれた3人ずつ2チームが挑んだのは、山賊に捕まった冒険者たちが、脱出して山賊を返り討ちにするというシチュエーションでした。1回目のチームは苦杯を呑んだものの、2回目に挑戦したチームは1回目を参考に見事に不意打ちに成功! その一挙手一投足に応援や笑い、歓声が湧き、観客が引き込まれていたのがよく分かりました。彼らが山賊を倒した時には自然と拍手が沸き起こっていました。

LARPセミナー

本格的なLARP用衣装に身を包んだレイムーンLARPの皆さんと、真剣に聞く観客

 

この他にも、夜の空き時間には、空いた部屋でTRPGやボードゲームを楽しんだり、お酒を飲みながらTRPGや創作について語り合ったり、参加者皆さんが思い思いにアナログゲーム漬けのひとときを満喫。また、今回からは物販コーナーも設けられ、レイムーンLARPさんによるLARPのノウハウが詰まった同人誌(こかげ書店でも販売中)や発売したばかりの『コクーン・ワールド ザ・ボードゲーム』(しかもイラストレーターの弘司さんのサイン入り!)などが販売され、こちらも注目を集めていました。

こうした文華祭は、2007年にTRPG日本上陸25周年を記念して開かれたコンベンションが元となった、比較的歴史あるイベントです。今回参加して、改めて感じたのは新規参加者の多さでした。70人近い一般参加者のうち、初めて文華祭に参加したという人が10人以上を占めていました。

主催者のTRPG文華祭実行委員会について現在の参加傾向について聞いたところ、「TRPG歴の比較的浅い参加者の割合が徐々に増えていて、業界全体の活況の恩恵を受けていると強く感じています。また女性の参加者も増加していて、宿泊型イベントとして一番の課題と思っている“安心”をようやく提供できるようになってきたのかなと思います」と参加者の傾向を見ているとのこと。また、「文華祭は第1回からずっと参加してくれている常連さんが多いのも特徴です。この常連さんがいなければ、とっくに辞めていたと思います」と語ってくれました。

次回となる「第9回TRPG文華祭」は、2016年3月19日〜21日に2泊3日で開催予定(実は2泊3日は2010年以来。1泊2日だけの参加も可能にする予定とのこと)。今週末のJGCもありますが、その次にTRPGを泊まり込みで遊ぶ機会として、文華祭も楽しみなところです。次回は私もGMに立候補したいですね!(卓が不成立となる未来が見える……)


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