毎年、暑い夏の最後を締めくくるアナログゲームの祭典「JGC」。今年も8月29日~31日の3日間、全国のアナログゲーマーが新横浜プリンスホテルに集まりました。

JGCでは、グループSNEやF.E.A.R.などによる公式コンベンションをはじめ、ライブRPGや新作ゲーム体験会、JGCで初公開となる新作が物販スペースに並ぶなど、魅力が目白押し。フリースペースでは参加者同士のTRPGも遊べるとあって、寝る間を惜しんで遊ぶ参加者も多いほどの熱気に満ちています。もちろんTRPG every dayも新横浜へ突撃! 今回はグループSNEによるトークショーを中心に新しい動きを取材してきました!

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そして、31日にはJGC最終日らしく、グループSNEからは集大成と言えるトークショーが開かれた。

冒頭、SNEの安田均社長は「昨年のJGCから1年、活動の幅をさらに広げてきた。年初にHPでも掲げた通り、6部門に力を入れてきた成果が着々と現われつつある」と力強く語る。※日々つれづれ:安田均エッセイ/グループSNE

この6部門とは、TRPGをはじめとする以下の6部門。

・TRPG(ソード・ワールド2.0など)
・トレーディングカードゲーム(モンスター・コレクションなど)
・小説(TRPG関連小説や、オリジナル小説も)
・ボードゲーム(ゴーストハンター13など)
・コンピューターゲーム(アプリゲームなど)
・イベント(コンベンションやニコニコ生放送など)

作家集団グループSNEが、TRPGや小説をはじめ、時代に合わせて活躍するフィールドを広げてきたことが分かるラインアップだ。さらに安田は個別の見通しとして、TCGでは「モンスター・コレクションを継ぐ物が発表される」、ボードゲームでは「従来出版社など別会社から発売してきたが、グループSNEが制作も手掛けていく」と新たな動きに触れ、変化し続けるグループSNEを印象づけた。

■ボードゲームも小説も! ゴーストハンター復刊記念スペシャルトーク

続いて各分野の作家陣が入れ替わり登壇し、最新の動きについて語った。

JGC物販スペースで発売予告された、「ゴーストハンター13 タイルゲーム」の次回作「ディアブロ・ドゥ・ラプラス」

JGC物販スペースで発売予告された、「ゴーストハンター13 タイルゲーム」の次回作「ディアブロ・ドゥ・ラプラス」

ボードゲームが話題の「ゴーストハンター13」。単なるボードゲームでなく、TRPG要素もふんだんに取り入れたゲーム内容はTRPGファン、ボードゲームファン双方から人気を博している。実はその歴史は古く、作品として最初に発表されたのが1987 年のPCゲーム版「ラプラスの魔」だ。その小説版である同名の作品が今年 9 月に、続編「パラケルススの魔剣」も11月に復刊することが発表された。

この小説について、原案の安田均は「当初はコンピューターゲームとして企画され、山本さんに小説化を頼んだ。何度か復刊するたびに読み返しているが、その度に発見がある。優れた作品ならではの特徴だ」と魅力を語る。

作者の山本弘は「『ラプラスの魔』は僕にとって作家人生のスタートとなる小説だった。ゲームの企画を元に、館の形や部屋を書き出してみて、小説を考えた」と、当時を感慨深げに振り返った。

復刊される「ラプラスの魔」には、その前日譚と言える短編も掲載される。その裏話も語られ、
「実は400枚の予定が550枚書いてしまった。短編は無理やり削ったファーストシーンを独立させたもの」(山本)
「続けて読むと、作品がもっと怖くなる。ゴシックホラー、サイコホラー、コズミックホラーといったホラー小説の諸要素が詰まった作品と分かる」(安田)
もちろん続編「パラケルススの魔剣」も復刊に当たって短編が追加。こちらは山本が新規に書き下ろした。

さらに、復刊にとどまらず最新作「アルケリンガの魔海」の執筆も進んでいる。こちらは安田均と秋口ぎぐるの共著で、2015年1月に刊行予定だ。

実は、秋口がグループSNEに入社して初めて関わったのが「ゴーストハンター02」のシナリオサプリメント。こうした縁もある秋口が著作を担当することになって、まず驚いたのが安田から渡された大量の資料という。しかし、秋口はそれを見事に調理し、安田をして「秋口にしか書けない」と言わせる原稿がほぼ出来上がっていることが明かされた。安田は「秋口君の原稿に、これから僕も手を入れて完璧な合作にする。来年を楽しみに待ってほしい」と自信を見せた。

■1000人参加のリプレイ!「3D小説」

3D小説公式サイトはこちら

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続いて、今夏、多くのネット読者を虜にした企画「3D小説」にテーマが移った。

3D小説はtwitterやニコニコ動画を舞台として、読者参加型でストーリーが展開するという双方向のWEB小説企画だ。ニコニコちゃんねるで発表される小説の断片に、読者がリアクションを起こすことで物語に変化が起きていく。第1弾が13年5月に展開され、バッドエンドを回避するために日本全国の読者が奔走した。今回はさらにスケールを広げて、7月24日からスタート。読者は毎日の展開を追いかけるだけでなく、謎を推理したり、読者同士で検証するなど、熱く盛り上がった。

この3D小説を企画した謎のクリエイター「少年ロケット」に代わり、執筆を担当した河野裕、河端ジュン一の二人がトークショーに登壇し、「読者のアクションに対応して小説が展開するので、書き溜められた原稿は半分程度。毎日リアルタイムで原稿に追われたせいで、今も夢に見る」「ユーザーが決めて進んだ物語と言える。ぜひネットのログを見てほしい」と少年ロケットと共に関わった濃密な1カ月を振り返った。

濃密な1カ月は読者にとっても変わらず、3D小説が終わったことでペットロスならぬ「“3D小説ロス”の声も見かける」(河端)ほど。これだけ人気を集めた企画とあって、第三弾も検討中という。

さらに、3D小説のネットログは再構成の上で紙媒体の小説になる。もちろん最終日だけで5000ツイートを記録するほどの盛り上がりだっただけに、全ては盛り込めない。「ネットらしい雑多さを残しつつ読みやすくスリム化」(河野)し、ネットユーザーと一緒に謎解きを追体験できる小説になるという。いわば「1000人が参加したTRPGリプレイ」(安田)だ。富士見書房からの年内予定の刊行が待ち遠しい。

■ソード・ワールド2.0アプリは冒険者の宿運営ゲーム

国内ファンタジーの王道ソード・ワールド2.0のアプリゲーム制作も進行している。11月頃リリース予定の同作は、ソード・ワールド2.0リプレイ「魔剣の島の駆けだし英雄」と同じグレイシア島を舞台に、冒険者──ではなく、冒険者の宿の主人となって冒険者たちをダンジョンなどに送り込むという、少し変わったゲーム内容。

メインシナリオを担当する川人忠明は、著作の登場人物やPCが死ぬことで有名な作家でもあり、「万人向けのアプリゲームなので、始めてすぐ人が死んだりというひどいことはしない」と言って会場を笑わせた。冗談はさておき、その意気込みと熱意は本物だ。1シナリオにつき長編小説一冊分ものテキストを必要とする本作だが、すでに5本目に取り掛かっているというから、そのボリュームに驚かされる。

もちろん、グループSNEが関わる作品とあってサブシナリオも充実し、ゲームの自由度を高めている。藤澤さなえをまとめ役として、グループSNEの新人4人が執筆するテキストはメインシナリオを凌駕するボリュームという。「コンピューターゲーム『ソード・ワールドSFC』の100本シナリオ以上」(北沢慶)と太鼓判を押した。

アプリと同じ舞台でのセッションはニコ生で公開生放送されている。第3回は間もなく9月20日!

■グループSNEがボードゲームを直接制作へ

近年グループSNEのカラーが大きく目立ち出したボードゲームも、外せないテーマ。

グループSNEで今やボードゲーム・カードゲームの牽引役の一人と言える秋口ぎぐる(川上亮)は、アナログゲーム会社「コザイク」を立ち上げて、「ブラックストーリーズ」をはじめとする魅力的な海外ゲームの日本語版を次々に販売。自らも「キャット&チョコレート」を手掛けるなど、精力的な活動を展開している。さらに、ボードゲーム業界への参入を志すクリエイター向けに、海外の印刷所を仲介する「世界印刷」も設立し、SNEにとどまらず国内ボードゲーム業界のキーマンとなりつつある。

世界印刷

もちろん、グループSNEでボードゲームといえば安田均。注目の海外ゲームとして、参加者同士の嫌がらせが楽しい「ポイズン」、アフリカの商人となって儲けを競う2人用ゲーム「アサンテ」などを紹介した。また、SNE制作のゲームでは、冒頭で語ったゴーストハンター13の他にも、小説・TRPGの「コクーン・ワールド」のボードゲームを来年春に発売することを発表。安田は「これからはグループSNEが直接制作も手掛けて、海外ゲームも含めて、次々にゲームを出していきたい」と意欲を語った。

コクーン・ワールドについての詳細なトークショーは別にまとめている→TRPGから生まれた「コクーン&ルナル」新展開に沸いたSNEトークショー

■時代小説やファンタジーなどオリジナル小説続々

さらに、作家集団だけあってオリジナル小説も次々と発刊されている。

友野詳は、リストラされた御庭番を主人公とした「からくり隠密影成敗」(富士見書房)、妖怪時代劇「あやかし秘帖千槍組」(廣済堂出版)という2作品を紹介。「80代の方からファンレターを頂いた。若い方から80歳までファンがいる国民的作家に(笑)」と自らの作風の広さを表現した。

河野裕は、新潮社が力を入れる「新潮文庫NEX」第1弾として「いなくなれ、群青」を刊行。「自分の一番素に近い小説」と表現する同作は、青春ミステリであり、どこか寓話的な雰囲気も持つ不思議な物語。

また、河端ジュン一の「まちがい英雄の異世界召喚」(富士見書房)は、最強にもかかわらず恋だけが成就しない運命を持った主人公がその運命をひっくり返すために異世界に行くファンタジー小説。主人公の思い人がついにイラスト化するという最新作第三巻は11月刊行予定と明かした。

■グループSNE安田社長よりコメントを頂きました!

グループSNEの最新の展望が明かされたトークショーは、入れ代わり立ち代わり10人超の登壇者のトークに終始盛り上がりっぱなしだった。何より印象的だったのは、登壇者の顔つきと語り口。とにかく「楽しい!」「面白い!」が伝わってくる姿は、続々と発表される作品への期待度を盛り上げる。

さらにJGC終了後にも、
「来年は”SNE六門展開”の二年目。さらにアッと言う企画も用意していますが、来年になるまで明かせません。もう少しお待ち下さい」
と当サイトに語ってくれた安田社長。6つの柱がそれぞれに成長し、新たなる驚きを見せてくれることを我々ファンに力強く約束してくれた。常に成長を続ける「グループSNE」によって紡ぎ出される新たなストーリーが、今から楽しみで仕方がない。


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