TRPGの魅力を引きだすのは、なんといっても想像力です。GMをしているとオリジナルの追加ルールを取り入れたくなり、ついには独自のルールを考えた経験のある方も多いのではないでしょうか。実際に、そんな魅力的なオリジナルTRPGを作ろうというのが同人サークル「グループSGR」が実施した「一緒にTRPGを作りましょうコンテスト」です。
その締め切りが4月末(※現在は5月7日24時に延長)に迫ってきました。同人サークルの主催ながら、当選した企画者に原稿料を支払うほか、イラスト・印刷の費用、DTP・流通作業はサークル側が負担するという太っ腹な企画です。
一緒にTRPGを作りましょうコンテストを開催します
当選者の方には一枚目の特典をプレゼント!
死ぬほど面白いアイデアはあるが作り方がわからん! という方を応援します!この世に面白いシステムを増やすため拡散おねがいします!
審査する人は三枚目以降の奴を作りましたhttps://t.co/IFp5iwalks pic.twitter.com/iUeQX93BpX
— “トライアンダー”のシグレ (@groupsgr) February 28, 2018
2月末にTwitterやWebサイトで告知された上のツイートを目にした人も多いことでしょう。ただ、同人サークル主催ということで、予算や判断基準、今後の展開など細かい話も気になるところです。そこで、主催である「グループSGR」さんに企画の狙いや展望を聞いてきました!
■そもそも主催のグループSGRってどんな同人サークル?
まずは、主催者団体である「グループSGR」について説明しておきましょう。2017年3月から活動している比較的新しいサークルで、実はそのメンバーは企画・執筆などを担当するシグレさん(@groupsgr490)1人。都度ゲーム仲間の協力を仰いでいるとはいえ、ほぼ1人でTRPGやオリジナルダイス、アナログゲーム制作などの活動を活発に展開しています。
その代表作は、悪党だけが住む犯罪都市を舞台にヒリつくような駆け引きを楽しむオリジナルTRPG『ピカレスクロマンTRPG』。2017年3月に販売されて以来、長らく人気を博しています。また、ソード・ワールド2.0(SW2.0)の初心者向けシナリオ集『ヒーローアドベンド』は基本ルールブックだけで遊べるほか、多数のサプリメントの解説なども収録されており、SW2.0の導入ガイドとしても魅力的な作品に仕上がっていました。
■募集企画の理由は「ノウハウ不足に悩んだ自分の経験」
そのグループSGRがなぜTRPG企画を外に募ろうと思ったのか。シグレさんは「自分が経験した無駄」がきっかけだったと語ります。
──そもそもTRPG企画を募集しようと思ったきっかけは何ですか?
「自分がゲームを作りに挑戦した当初は、あまりにノウハウがなくて紆余曲折してしまいました。同様に面白いアイデアがあるのに、(完成形に仕上げるまでの)手段が思いつかず、形にならないまま挫折してしまう人も多くいると思ったんです。それってすごく勿体ないですよね。それで以前にも『オリジナルTRPG創作の会』のような講座を開いて、ノウハウの共有に取り組んできました。知っていれば解決する所で時間を無駄にする必要はないはず。この企画も、良いアイデアを形にするためのノウハウを提供したいと考えたからなんです。
もう1つの理由が、単純に『創る作業が好き』ということ。自分にないアイデアを持った人と一緒に創れたら、それはまた楽しいだろうなあ、と思って。結局は自分の楽しさが一番の理由ですね(笑)」
──ファンタジーやホラー、SFなど優先されるジャンルはありますか?
「ジャンルは自由です。応募の中にも書いていますが、既存の作品との差別化が図れていれば問題ないと思っています。たとえば、同じホラーでも『クトゥルフ神話TRPG』と『インセイン』は住み分けができていると思いますし、『デッドラインヒーローズ』と『マージナルヒーローズ』もアメコミヒーローと特撮ヒーローのように住み分けができている作品ですよね。
ただ、“差別化”という点で言えば、手垢のついたファンタジーなどは、よほど明確に住み分けていないと難しいと考えています」
──TRPGといえば同人活動も活発で、すでに同人誌などで発表している作品を応募したいという方もいらっしゃると思います。そのリメイクなどの応募は可能でしょうか?
「同人誌はもちろん、例えばオンラインで公開しているルールをリメイクして、というのも可能です。ただ、そのまま作ったものを投げる、というのはお断りしています。応募フォーム(リンク先参照)に沿って書き直してみてください」
──応募作の評価・判断はどのようなメンバーが、どのように行うのですか?
「そもそもグループSGRが基本的に僕一人で、都度友人に協力をお願いして活動しているため、必然的に自分が一人で判断することになります。
判断基準としては、“コンセプトが明確である”“既存作品との差別化が明確”“プレイヤーを意識している”の3点を重視しています」
──失礼なようですが、商業のTRPG作品でさえ安定した売れ行きが難しい昨今、少なくとも30万円以上もの制作費を提供するのは賭けの要素が強いようにも感じます。同人サークルとしてはかなり重い負担と思うのですが、どのように用意されるのですか?
「ネットの反応では『クリエイターを買い叩いている』という声も見えたので、そう言っていただけると恐縮です。基本的には、自サークルの売り上げからの流用になります。沢山の方にご購入いただきましたから、さらに魅力的な作品が世に出るのを応援することで、TRPG界隈に還元できたらなという想いが根っことしてあります。
また、デザイナーさんの原稿は買い上げという形になりますが、仮にまったく売れなかったり、増刷の判断を誤ったりした場合でもデザイナーに負担を求めることはありません。そこはリスクがない面との一長一短として受け取ってもらえればと思います。もちろん人気が出て、継続的に展開する場合は、サプリメントなどの制作とその報酬で還元していこうと考えています」
──合格作品とは、どのようなスケジュール・体制で制作をしていくおつもりでしょうか?
「企画のボリュームによりけりとはなりますが、5月末の発表後から着手し、冬のコミックマーケットやゲームマーケットに標準を合わせる流れになります。
作品は、独りよがりにならず、ユーザーの遊びやすさを意識した作りにするという観点では口を出しますが、それ以外はデザイナーさんの趣向をなるべく汲みたいと思っています。もちろんデザイナーさんが希望するなら、ギミックやデータなどアイデア出しには全面的に協力したいですね」
──例えば、同人誌制作が未経験の方ですと、編集者のようなサポートも必要になるのでは?
「もともと進行管理はデザイナーにとってわずらわしい面がありますので、原稿に集中できるようサポートしていく考えです。自分の経験もあるのですが、自分で設定した締め切りだとナァナァになりやすいんですよね。そこを自分が指定することでモチベーションにつながるのでは、とも考えています。もちろん仕事や特段の事情があれば優先していただく場面もあるでしょうから、そこは同人活動という趣味の領域らしく、話し合って無理なくスムーズに進むよう調整したいですね。
慣れている方で、ご自身が希望されるのでしたらペースのコントロールやスケジュール感の設定は基本的にお任せしようと思います。とはいえ、安くはないお金が動くので、企画倒れにならず作品が形になるよう、最後まで伴走するように最低限の管理・チェックはさせていただくことになります。企画のタイトル通り、“一緒に作る”企画ですから」
──現在までの応募状況はいかがでしょうか?
「現在は4作品※ほどです。合格作品は素晴らしいアイデアがあれば複数もあり得ますし、残念ながらゼロという可能性もありますので、そこはご理解ください。
また、従来の締め切りは4月30日としていましたが、今回の取材もありますので5月7日24時まで締め切りを伸ばすことにしました。ゴールデンウイークもあるので、ぜひ力作を応募していただければと思います。ちなみに、システムのギミックなどができていなくても核となるアイデアが面白ければ評価します。とにかく『これは面白い!』というアイデアがあれば送ってください!」
(※応募作品数は2018年4月23日時点のもの)
[一緒にTRPGを作りましょうコンテスト/募集要項]
・下記URLのテンプレートに沿った形でオリジナルTRPG企画※を投稿
http://groupsgr.work/trpg/2018/02/28/143/
・応募締め切り:2018年5月7日24時
・原稿料6~12万(ボリュームに応じて相談・買上)
・イラスト・印刷費用、編集・DTP・流通作業をグループSGRが担当
※二次創作作品は禁止
■募集企画だけでなくピカレスクロマンのサプリメント先行体験会も
もちろん、グループSGRでは本体の活動も検討されています。人気のピカレスクロマンTRPGでは、ついにサプリメント『キス・デカダンス』を今夏に頒布予定とのこと。それに先立つ6月16日には、サプリメントの先行体験会が東京・池袋で開催されます。
『ピカレスクロマンTRPGサプリメント先行体験イベント』
一周年とピカレスクロマンTRPGサプリメント発売を記念して、イベントを開催いたします
ルルブは持ってるけど未経験、という方も歓迎です
詳細は添付ビラにて
ビラの拡散だけでも嬉しいです#ピカレスクロマンTRPG#ピカロマ pic.twitter.com/Z6vk5sReP1
— ピカレスクロマンTRPG (@picaresque_r) April 14, 2018
単なるコンベンションではなく、ピカレスクロマンTRPGの舞台である「街」をイメージした特別な仕掛けが用意されるとあって、期待も高まります。セッションの他にも、制作秘話や同作の世界観など、同作への理解をさらに深める企画も用意されているそうです。
シグレさんも「ピカレスクロマンTRPGや悪党という単語に興味があれば、卓未経験者でも構いませんので、ぜひお気軽にご参加ください!」と熱のこもった口調で語ってくれました。ご興味ある方は、下記URLの応募フォームからどうぞ!
[キス・デカダンス先行体験会]
・日時:2018年6月16日 11:00~17:00
・場所:東京・池袋 ボードゲームショップ ミステル(https://mistel.jp/)
・募集:25名(プレイ経験不問。定員を超えた場合は抽選)
・参加費:2500円(23歳以下は1000円割引あり)
・募集締め切り:2018年5月9日
・参加者発表:2018年5月16日
TRPGの質問・疑問に答えるチャットを開設しています。お気軽にご参加ください。
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