2015年12月16日、KADOKAWA富士見ホールで、季節外れの熱い新作発表会が行われました。今年7月に『ガーデンオーダー』『アマデウス』を大々的に発表したのに続く第二弾では、グループSNEの新作ゾンビ物『ダイス・オブ・ザ・デッド』、『永い後日談のネクロニカ』などで知られるインコグ・ラボとの初タッグ作品『常夜国騎士譚ドラクルージュ』が公開されました。さらにFEARからも新展開が発表され、会場には何度もどよめきが湧きました。その詳細をレポートします!
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ドラゴンブック初のゾンビTRPG『ダイス・オブ・ザ・デッド』

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先頭を飾ったのは、グループSNEのゾンビ物TRPG『ダイス・オブ・ザ・デッド』。ゾンビ物は、ゲーム『デッドライジング』や映画『ドーン・オブ・ザ・デッド』などドラマやゲームでも人気のジャンルであるため、TRPGを知らなくても馴染みある人も多いでしょう。

本作の舞台は現代の東京。PCは「ゾンビ細胞」に感染した人間となって、ゾンビとのサバイバルを繰り広げることになります。パニックホラーのゾンビがベースということもあり、ゲームではゾンビを倒すよりも、「ゾンビの真似をしてゾンビをやり過ごす」ような“生存”に主眼が置かれているのが特徴的です。

また、PCが感染しているゾンビ細胞の感染度はゲーム中にも変化。上昇すれば人間離れした能力を発揮できる一方で、思考がぼんやりするといった悩ましい武器となっています。このゾンビ感染度をはじめとするルールは、セッション中のアクシデント(イベント)を引き起こす引き金にもなり、それこそパニックホラー映画のように最後まで手に汗引かない緊張感あるプレイになるとのこと。『クトゥルフ神話TRPG』や『インセイン』とも違ったホラー感覚を味わえそうです。

さらに、ボードゲーム版『ダイス・オブ・ザ・デッド』も4月に発売。こちらはゾンビ細胞の感染者が著しく増え、政府がバリケードで隔離せざるを得なくなった東京が舞台に。しかも政府はゾンビの自然沈静は不可能と判断し、爆弾の投下を決断する間際という切羽詰まった状況でのゲームになります。プレイヤーは爆弾投下を阻止するように立ち回りながら、ゾンビとも戦わねばなりません。TRPG以上にスリリングです。

ボードゲーム版のコンポーネントはTRPG版にも利用できる予定です。シートやダイス、スキル類を記入したカードがあるリッチなセッション環境であれば、初心者もTRPGをイメージしやすくなります。同じくボードゲームのようなコンポーネントで好評を博した『ソードワールド2.0スタートセット』のノウハウを持つ、グループSNEならではの嬉しい工夫と言えるでしょう。

◇ダイスドラフトシステム&シナリオ自動生成ルール

本作はシステムとしても独自性の高い内容になるようです。「ダイスドラフトシステム」は、シーン冒頭にダイスを1つずつ振り、判定に使う出目を選んでおくという、今までにないもの。行動によって判定の基準が変わるため、単純に出目の高低だけで選ぶわけにはいきません。また、出目によってイベントが発生したり、敵の行動選択にも影響が出るため、どの出目を取り、どの出目をGMに取らせないかといった葛藤が醍醐味になるようです。

さらに、ダイスを振るだけで敵の出現やイベントが決まるシナリオ自動生成ルールを使えば1時間でセッションを遊ぶことも可能に。この一作品で非常に多様な遊び方ができそうです。

インコグ・ラボとの初のタッグ作品は耽美的・中二的な「吸血鬼×騎士」物!

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今回の発表会で予告段階で驚かれていた内容の一つが、『永い後日談のネクロニカ』などインディーズTRPGで人気を博し、今春には新紀元社から初の商業TRPGとなる『でたとこサーガ』を発売したインコグ・ラボとのタッグでしょう。

そのインコグ・ラボによる新作『常夜国騎士譚RPG ドラクルージュ』のコンセプトは「吸血鬼×騎士」。吸血鬼の弱点である太陽が破壊され、吸血鬼が統べる世界を舞台に、吸血鬼の騎士となって、騎士同士で絆を高め、外敵から領土を守り、主の寵愛を高めるゲームになるそうです。同じ不死者(アンデッド)をテーマにしながらも『ネクロニカ』と違ったゴシックロマン濃厚な世界を、神谷涼先生がどうTRPGに仕立てるのか、期待が高まります。

インコグ・ラボの江島博代表は「我々の作品はテレビに例えれば深夜番組。今回光栄にもゴールデンタイムにお招きいただいたが、深夜番組を作るという思いは変えずに、皆さんのご期待に応えられる作品をお届けしていきたい」と意気込みを語りました。

◇公式サポートブログがオープン!

早くも『ドラクルージュ』の公式サポートブログがオープンしました。こちらではイラストや世界観など、気になる情報を続々公開していくとのこと。要チェックです!

異世界転生、異世界転移、異世界憑依…アリアンロッド世界に現代人が登場!

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2004年の初版より10年以上愛されるファンタジーTRPG『アリアンロッドRPG』では、新展開が発表されました。『2E』に版上げして以降も積極的な展開を続け、11月20日にも新サプリメント『アイテムガイド2』が出たばかり。そのアリアンロッド2Eの基本ルールブックの改訂版が、3月19日に発売されます。

その目玉は、“現代人”。異世界転生や異世界転移など、ライトノベルで改めて注目を浴びているジャンルがアリアンロッドの世界に融合します。異世界への登場の仕方を「召喚」「アクシデント(トラック事故や、家具が異世界につながるなど」「死(転生や憑依など))」の3タイプにまとめ、『ナルニア国物語』のような古くから親しまれている作品から、今人気の「小説家になろう」発のライトノベルまで、多様な異世界物キャラクターの再現が可能になるとのこと。種族スキルをはじめ、データはエリンの種族と変わったものになるそうで、その違いに期待が高まります。

もともと『アリアンロッド』には「来寇者」という外の世界の存在が設定されており、「以前から少しずつネタ晴らししてきた」(菊池たけし先生)と長い構想があったことも明かされました。

また、サプリメントを追加していく中で出てきたルールのブレも改めて見直し、改訂版ではルールを修正・統一。改定前と同様、文庫本で出ることもあり、ぐんと遊びやすくなった『アリアンロッド』改訂版の発売で、ユーザー層の輪もさらに広がりそうです。

加えて、4月には改訂版初のリプレイ『ストレンジャーズ(仮)』5月にはサプリメント『ストレンジャーナイト(仮)』と続々の刊行予定も発表されました。特に、サプリメントでは現代人での遊び方のガイドや、ライフパスなどの新データを多数掲載しており、菊池先生は「ダイスを振るだけで異世界小説のネタ元になる」と自信を見せました。

『メタリックガーディアン』の新たな導入冊子となるEXルールブックを発売

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同じくFEARからロボットTRPG『メタリックガーディアン』の新展開も発表されました。それがメタリックガーディアンRPG『EXルールブック サードワールドウォー』です。本作では、従来のロボットに加えて、ロボットと人間が融合する「オリハルコン級」、重力を操作して時間を止めたり瞬間移動が可能な「グラビトロン級」、従来のロボットに搭乗するには必須だったリンケージの力を持たなくても操作可能な民生ロボ「ブレイブ」などの新ロボットが追加されます。

また、追加データ・ルールだけでなく、この一冊だけで遊べるルールを網羅しており、新たに『メタリックガーディアン』を始めたいというユーザーへの入門編としても便利な一冊になるでしょう。

背景世界も、宇宙から新勢力が襲来し、地球連邦政府と帝国との三つ巴による第三次世界大戦という新たな局面を迎えました。併せて、宇宙での活動に対応したルールを追加しており、より多様な戦場でのセッションが展開しやすくなっています。

また、これまではデザイナーである林啓太先生がロボットイラストを手掛けてきましたが、アニメーターの久壽米木信弥氏が表紙イラストを担当。現在放映中のアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』でのメカニック作画監督をはじめ数々のロボットを手掛けてきた同氏の参戦は、ロボットファンには嬉しいニュースと言えるでしょう。

さらに、3月には追加ルールを採用したリプレイ『メタリックガーディアンRPGリプレイ・エグゼクス黙示録の勇者、誕生!』を文庫本で発売。ロボットと融合するオリハルコン級の力を得た少年が、世界大戦の裏で暗躍する機械生命体に立ち向かっていくというストーリーが熱く展開されます。林先生は「ここまで展開できたのはユーザーの皆さんのおかげです。ぜひEXルールブックでキャンペーンを遊び、皆さんの第三次世界大戦を作り上げてほしい」と語りました。

『アマデウス』がついに発売!追加ルルブは3月に!

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8月に発表されてから話題となってきた冒険企画局の新作『神話創世RPGアマデウス』。12月19日についに発売されたルールブックを皮切りに、新刊・イベントが続々予定されています。『アマデウス』は発売版ルールの体験会レポートともども別記事にまとめしたので、こちらをご覧ください!(別記事:【DB新作発表会】参加してきました、『神話創世アマデウス』体験会リプレイ風レポート!

DB編集部は10代・20代にチャンネル拡大を図っていく

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発表会を彩った登壇者ら。左から、林啓太先生、久保田悠羅先生、菊池たけし先生、味里。さん(声優・司会)、藤田憲一ラストクロニクルプロデューサー、河嶋陶一朗先生、江島博代表(インコグラボ)

ドラゴンブック編集部は、今回のようなTRPG新作発表会だけでなく、2015年8月から月1回程度のスパンでTRPG体験会やKADOKAWAコンベンションなどのTRPGに触れる場を熱心に提供してきました。出版側がこれだけ精力的に体験会を開催するのは、かつてない試みです。

同編集部の細野君郎副編集長は、そうした体験会の開催を通じて、20代後半~30代が主だった参加者層に、10代、20代の新しい層が加わり、「30代と20代が同数」となるほどの変化を実感していると指摘しました。

日本には、TRPGに遊ぼうとする若い方の増加と、TRPGを短い時間で楽しもうとする二つの潮流がある。この中で、色々な可能性が広がってきた」と期待感を明らかにし、そのためにも「TRPGを遊ぶ環境を提供することは我々の至上命題と思っている。イベントの展開や、発表会など多様なチャンネルを設け、より多くの人たちに興味を持っていただけるようにしたい」と力強く展望を語りました。

次回の発表会は来春、その場ではさらなる新作も発表予定とのこと。まだまだドラゴンブック編集部の動きから目が離せません!


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