12月17日に開催されたKADOKAWAドラゴンブック編集部による「TRPG新作発表会」では、続々と新作や新展開が発表された他(発表内容の記事はこちら!)、ついに12月19日発売となった『神話創世RPGアマデウス』の体験会も行われました。『アマデウス』は発売に先立つ8月には、実際に遊べるだけのルール(スタートセット)を先行公開するなど、積極的なアプローチで大きな反響になっていた作品です。『サタスペ』『シノビガミ』などののシステムを手掛けてきた河嶋陶一朗先生の、久しぶりの完全オリジナル作品ということもあって、TRPGファンの期待も高まっていました。折角の正式ルール初体験なら、セッションの雰囲気をぜひお伝えしたいところ。そこで、以下はリプレイ風スタイルで(脚色含む)体験会の内容をお届けします!
TRPG every day マスコットキャラクター

導入~冒険フェイズ──複雑に見えてスムーズに入り込めた個性的なルール

アマデウス表紙

神話創世RPGアマデウス

まず『神話創世RPGアマデウス』について説明しておこう。このTRPGの舞台は、古今東西の神話が蘇った現代。多くの人間は我々と同じ常識の世界に生きる一方、神々の力を受け継いだ神子〈アマデウス〉は、神々が実在するどころか、悪意を持って介入する神々さえいることを知っている。PCは世界に介入できない神々の代理人=アマデウスとなって、悪しき神の介入による災厄「神話災害」と対決することになる。

GM「──というわけで、介入する神々に対して、介入できない神々の代理人アマデウスとなってPCは戦うことになります。今回は体験会ということで、4種類のサンプルキャラクターの中から皆さんに選んでもらいます」

同じ卓でセッションに参加したのはいずれも記者・ライターばかり。好きなゲームやジャンルなどを添えた自己紹介を交わして雰囲気も和やかになったところで、本番に入った。GMが配布したサンプルキャラクターは、「ゼウス」「アマテラス」「バステト」「ナイアーラトテップ」を親神とするアマデウス。それぞれギリシャ神話、日本神話、エジプト神話、クトゥルフ神話と出典が異なる神々だ。

GM「親神は、一般的なTRPGにおけるクラス・職業のようなものですね。能力値にも影響があり、ゼウスなら愛や力に優れ、アマテラスなら高い霊力の一方で力が弱い、というように傾向が違います」

『アマデウス』では、もう一つ、クラス・職業に近い要素として「背景」がある。今回は体験会ということで、いずれも癖のない「創世の子」が設定されていた。

参加者はいずれも神話やゲームに目がないということで、キャラクターシートを見る目も真剣だった。とっかえひっかえしては「ゼウス、阿呆の子なんだな」「バステト、レーザー撃てるんですね」「引きこもりでゲーマーか……アマテラスにシンパシーが」などと言い合いながら、自分のPCを決定した。そうして生まれたアマデウスたちが次の4人だ。

メムノン(ゼウス/男)
ゼウスゆかりの企業コンツェルンの御曹司。過保護に育てられたせいか、自信家で気取ったところがある少年。実際には鍛錬に余念がなく、自信に見合った実力を備えている。

双六(アマテラス/男)
シャーロックホームズの系譜に連なる少年で、血族(同じ神に連なる神子たち)から期待されてきた。祖先の血も濃く、神話探偵というべき活動をしている。

ミケ(バステト/女)
共に捨てられた三毛猫と育った孤児。幼馴染といえる猫が死に、悲しみに暮れているところ神の声を聞いた。猫とゲームをこよなく愛する自由人。

ナナ(ナイアーラトテップ/女)
孤児のため天邪鬼な性格に育ったが、食べ物につられるちょろい少女。クトゥルフ神話らしく、サイコロのイレギュラーな数字ということで名前を付けてみた記者のPC。

河嶋先生

記者が参加したのは、なんとデザイナーの河嶋陶一朗先生がGMのテーブル。優しくも軽妙な語り口のマスタリングで、自然とゲームに引き込まれた

体験会なのでサンプルキャラクターを使ったが、PCがどんなキャラかといった設定を決めやすいように、ダイスでランダムに設定を決められるチャート表も用意されている。親神との関係、職業(学生が一般的な年齢のキャラクター向けには、「お金持ち」「大食い」などの個性を付与するチャート表も別に用意されている)などがそうだ。親神や背景と組み合わせれば、キャラクターの根幹となる設定が決まり、そこから想像を広げやすくなるだろう。
ちなみに記者は、親神との関係は「孤児」(生まれつき親神に見出されていなかった)、職業が「大食い」だったため上記のようなキャラにしてみた。

GM「では、導入シーンに入りましょう。
君たち4人がいるのは、ギリシャのオリュンポス山にある巨大な塔です。塔は雲を衝くほど高く、内部は吹き抜けになっていて無限とも思える螺旋階段が上へ上へと続いています。君たちがここを訪れたのは、親神の指示があったからです」

この塔は、一人前のアマデウスを見定める試練場だ。新米アマデウスであるPCたちは親神から送り込まれたという状況という。偶然4人は居合わせただけで、思い思いに上を目指していたが、どれだけ登っても景色は変わらない。そんな場面からセッションは始まった。

GM「では、判定の試しと思って、皆さん武勇で判定をしてください。失敗すると、思わぬ消耗をしたことになります」

判定で基本的に使うダイスは1つ。能力値によってダイスを振る数は増えるものの、その中から選ぶルールだ。2個以上のダイスを振った場合、残る出目の中から1つが、対応する「インガ」となって、PCが使うギフト(本作におけるスキルや特殊能力のこと)のリソースになったり、セッションに影響を与えたりする。

メムノン「ゼウスは武勇が高いので、俺から振ろうか?」
GM「このゲームは基本的に、有利な人から振った方が良いですよ。何かのインガが溜まるので、不利な人がギフトを使う条件を満たしやすくなります」
メムノン「目標値は4だったっけ? では、武勇A+なので、ダイス3個。+が付くと判定値に+1されるので3以上なら成功だな。……(ころころ)よし、成功! フッ、この程度の階段など余裕だな」
GM「では、残る出目から『ムードダイス』を1つ選んでください」
メムノン「じゃあ……みんなのギフトで赤は必要だよな? 赤の2をムードダイスに」

ムードダイスに選ばれた出目に対応した色のインガが、運命の輪シートに蓄積されていく(写真)。1マスに蓄積するインガは3つまで。つまり4つ以上だとインガが第二段階となって、より強力なギフトを使用できるようになる。

運命の輪

『アマデウス』で使う管理シート「運命の輪」。特殊能力のリソースとなる「インガ」の蓄積具合を示す。スタートセットから存在したシートだが、今回は、右側に冒険フェイズで選択できる行動が記載されたサマリー付のシートを使用していた。こうした配慮があると、初体験の人もぐっと遊びやすくなるだろう

ナナ「じゃ、次は武勇Aの私が。他の連中のペースに付き合ってらんない、とばかりに壁を蹴ってショートカットしようとする。……(ころころ)出目は5,3,1。5で成功として……ムードダイスをどうしようかな」
GM「1なら黒のインガですね。ナナの親神ナイアーラトテップには、黒をリソースとするギフトがありますから、最初から黒を配置しても大丈夫ですよ」(菩薩のような微笑)
ナナ「じゃあ、その方がいいのかな……?」
メムノン「待て。黒のインガは10個たまったらゲームオーバーって書いてある」
ナナ「ああ、危なっ!?」
GM「いやいや、黒のインガは溜まると大変ですが、少しくらい大丈夫ですよ」(微笑)
一同「(……その笑みが信じられない)」

出目1に対応した黒のインガは、第一段階で判定に-1のペナルティが加わるなど、基本的に避けるべきインガだ。とはいえ判定の成功を優先させるなら、やむをえずムードダイスに1を選ばざるを得ない状況もたびたび起こり得る。とはいえ、場のインガを減らす行動やインガに影響するギフトもあるため、そこまで神経質にならなくても良いようだ。

双六「じゃ、僕は武勇が低いのでギフト『親神の恵み』を使ってみたいんですが」
GM「そのギフトは、親神に対応したインガが第一段階になっているのが条件ですね。アマテラスの属性は赤ですから、こっちの条件はOK。もう一つ、親神の権能(象徴するもの)に絡めた行動である必要があります」
双六「今登ってるのは塔ですよね……じゃあ、僕は“太陽”に向かって階段を上っているから、より親神を近くに感じて……というのはどうでしょう?」
GM「いいですね! では生命力を2点消費するごとに判定値を1点増やせますよ」
双六「では2点消費して、出目3以上で成功にします。……(ころころ)うわっ、ダメかー!」

ギフト『親神の恵み』は、どのアマデウスも所持しているギフトだ。自分の判定を上昇させられる便利な効果を持つ。親神の権能は、ゼウスならば正義、天空、情熱というように3つずつ設定されている。アマテラスは太陽がその一つだ。
残念ながら判定は双六のみ失敗し、生命力を消耗することになった。

GM「では、かなり登ってきたが、塔には変化は見えません。このまま登るだけでは状況は変わらないと確信できます。というところで」

そこでGMが取り出したのが1枚の「予言」カード。この予言もまた『アマデウス』の個性的なルールだ。予言はPCに1枚ずつ配られる他、シナリオによっては今回のように場にも提示される。

予言の表面には、「暗示」という断片的なストーリーが書かれている。表面だけでは現状の説明やヒントに過ぎないが、裏面に書かれている「トリガー」と呼ばれる条件を満たすことで、同じく裏面の「真実」に書かれた内容に従ってシナリオが進んだり、ゲーム的な効果が発揮される。

GMが出したカードには、どこまで登っても終わりのない塔と、その異常性を指摘する内容の『暗示』が書かれていた。

GM「ここからが冒険フェイズ。『暗示』は、頭脳による『調査』判定に成功すれば裏面を見ることができます。もちろん、他の行動をしてもOK。好きな人から好きな順序で、行動してみてください」

冒険フェイズでは、各プレイヤーがシーンを担当するシーンプレイヤーとなって、何らかの行動を行う。調査の他にも、互いの「想い」(PCやNPCの持つ感情のこと。この想いを使って判定に一時的なボーナスを得られる)を高める「交流」や、運命の輪のインガを減らしたりインガの位置をずらす「瞑想」、回復できたり良いイベントが起こりやすい「休憩」などがある。もちろん選択肢にない行動をGMに提案しても良い。

ちなみに調査は場に出された予言だけでなく、他のプレイヤーが持つ予言の裏面を見ることもできる。例えば、トリガーが「この予言を第三者が知らないまま冒険フェイズを終えること」、真実が「誰もあなたの呪いに気付かなかった。呪いは接触感染し、あなた以外のPCにペナルティを与える」といった厳しい内容もあり得るので、シナリオによってはPC同士の予言を調べることも重要になる。このように『アマデウス』の予言は物語やゲームのギミックとして活用できる幅が広く、GMのシナリオ作りを楽しくしてくれるだろう。

ミケ「じゃ、ミケは『交流』をするにゃ。ガールズトークということで、ナナちゃんに。……(ころころ)6が出たにゃ!」
GM「おお、素晴らしい。『交流』は通常成功だと、自分から対象か、その逆の想いを獲得するだけなんですが、出目6ならスペシャルとして両方の効果が発生しますよ」
ナナ「興味なさげにしてたんだけど、猫缶の匂いに惹かれたのかも(笑)」
ミケ「ねーねー、ナナちゃんも神様に言われて来たにゃ?」
ナナ「そうだけど……あんた、馴れ馴れしいね」

この他に、メムノン双六と交流し、判定にスペシャル。少年同士、少女同士で親交を深め合った。

ナナ「じゃあ、頭脳は一番高いので場の予言の調査をする。『もう、延々同じ風景なんて飽きたー』と本気を出す」

陰謀を張り巡らすナイアーラトテップらしく、頭脳はA+。とはいえ、これまでの判定で黒にインガが配置され、判定に-1のペナルティがあったため、確実を期して『親神の恵み』も使用した。ナイアーラトテップの権能の一つは“変化”。変わらぬ景色に変化を求めての行動、という理由づけにした。

この判定に成功して、裏面を見るとトリガーは「誰かが裏面を見る」こと、真実には「PCたちが魔術によって作り出された幻影に囚われていた」ことが書かれていた。

GM「気付いた途端、上層の方から、苛立たしげな獅子に似た咆哮が響き渡ります。ちなみに、裏面を見れないまま冒険フェイズが一巡すると、PC全員が消耗するところでした」
ナナ「なるほど。場の予言には、こういう緊張感の持たせ方もできるんだ」

調査する予言がなくなったので、双六は休憩を選択。休憩はそのシーンに登場するPC全てが食料を使って生命力を回復できる他、ランダムイベントが発生する。もちろん食い意地の張ったナナは食事のチャンスを逃さず、生命力を回復した(ナナ「黙々と食べては仏頂面を緩めてる。にへへ」)。

ランダムイベントでは、メムノンは人語を話す鳥と出会って「上層の獣に困ってるんだぴー」と退治を依頼された(メムノンがとどめを差せば経験点が増加する)。ナナは骸骨にいじめられているNPCアマデウスを助けたことでNPCからの想いを獲得した。双六は好きな対象と語り合うことで消費した想いを回復できたのだが、想いを使用してなかったので会話を楽しんだだけに。
といった具合に、かなりバリエーションある出来事を楽しめた。

決戦フェイズ──予言が物語を一層盛り上げる

GM「これでシーンプレイヤーが一巡しましたね。では、幻影を看破したPCたちの前に、上層から降りてくる巨大な影が立ちはだかります。その正体は、獅子と山羊と蛇を掛け合わせたような獣、キマイラです。キマイラは『幻影の中で疲弊し尽くしてやろうと思ったが、見破る知恵があるとはな。貴様らは俺が直接殺してやろう』と襲い掛かってきます」

こうして始まったのが敵や災害などと対峙する決戦フェイズ。決戦フェイズは次のような遭遇シートを使って、戦闘を行う。

遭遇シート

戦闘を管理する「遭遇シート」。本来、戦闘の当初では左上の「本体」以外の敵データは伏せられている

遭遇シートに表示されるのは主に敵のデータ。ただし、敵は本体のデータの他に、「脅威」という行動を持っている。ここで重要となるのが戦闘の処理だ。
戦闘は「パラグラフ」という行動順序ごとに、処理される。敵は、パラグラフごとに決まった脅威(行動)を発揮する。今回のキマイラなら、まずPCたちを挑発した上で、噛みつき、突進し、最後には炎を吐き出すという行動を取る。パラグラフという名称から分かる通り、物語=神話を思わせる仕立てになっているのが印象的だ。

実際のゲームでは、当初は敵の脅威カードは伏せられている。戦いを有利に進めたいなら、戦闘の最初に発生する「偵察ラウンド」で脅威の正体を一つずつ公開していく必要がある。判定で使う能力値は頭脳。今回のキマイラの脅威はパラグラフ1~4までの4枚あった。

GM「偵察ラウンドでは、全員1回ずつ判定できます。ただし、一人でも判定に失敗した時点で偵察ラウンドは終わり。しかも判定にファンブルすると反撃を受けるリスクもあるので、能力値が低いなら判定しないで偵察ラウンドを終える手もありでしょう」
ナナ「じゃあ、頭脳が高い人から判定した方が良いってことだ。私から行くとして……予言を公開する」
一同「おおっ!」
ナナ「トリガーは『偵察ラウンドに入った時』、効果は『敵の脅威を一つ公開する』。判定なしに公開できる。実は、今回の試練には新米アマデウスを狙った陰謀が仕掛けられていると気付いていたんだ、私は。……というわけで、陰謀を知ってたわけだし、どれが一番悩ましい効果かってのは分からないかな……(チラッとGMの顔色を伺う」
GM「良しとしましょう(笑)。じゃあ、一番目と四番目が怖いと思いますよ」
ナナ「うーん……なら、初手を公開。出鼻をくじかれるのが一番嫌だからね」

公開されたパラグラフ1の脅威は「挑発」。効果を受けると「恥辱」状態となり、回避判定を1低いランクで判定せねばならない(つまり使えるダイスが1個減る)。しかも術式というカテゴリのため判定で抵抗もできないため、誰かが先に妨害(一定以上のダメージを与える)して行動済みにするしかない。確かに、嫌な効果だ。

双六「なら、僕も予言をオープンします。トリガーは『誰かが真実を公開した時』。実は、僕は共に戦ってくれるアマデウスを探していたんです。真実が明かされたことで、信頼できる人だと確信できた」
ナナ「天邪鬼な子だけど、いいかな?(笑)」
双六「それも含めて、ってことで。効果は互いに想いを取れるので、僕からの想いは“大切”にします」
ナナ「じゃあ、こっちは“憧憬”にする。双六の素直さに、ちょっと憧れてしまうんだ」

双六の予言公開は、予言というルールが単なるゲーム効果だけでなく、物語を生み出していくギミックだと、記者が強く感じた場面でもあった。予言の真実に書かれた内容で、キャラクター同士の関係や行動が左右される。双六ナナはそれまで接点が少なかっただけに、プレイヤーとしても嬉しいサプライズだった。

さて、偵察ラウンドは続いている。残る判定では、双六が危なげなく成功。メムノンミケはともに頭脳が低く、ダイスは一つしかなかったのだが、仲間の想いも活用して見事成功。全ての脅威を公開することに成功した。

メムノン「フッ、俺ならば成功して当然だな」
双六「僕があの動きに気付かなかったら危なかったと思いますが……」
ミケナナちゃん、さっきのサンキューにゃ!」
ナナ「……そういうの、いいってば」

偵察ラウンドが終われば、互いに戦闘行動を取る乱戦ラウンドに移行する。

乱戦ラウンドでは、まず「プロット」という行動順決めから行う。河嶋先生の作品である『シノビガミ』などサイコロ・フィクションでお馴染みのルールなので、分かる人も多いだろう。パラグラフ1~5、そして欄外(6)のどこで自PCが動くかを、相談なしに決める。その際に使うのがダイスだ。自分が行動したいパラグラフの出目を上にしたダイスを手の中に隠して、一斉に公開する。

行動済みにしたい脅威があるなら、それと同じパラグラフに配置する必要がある。一方で、攻撃にはパラグラフの数値分ボーナスが加わるため、遅いパラグラフに配置した方が威力は上がる。また、欄外だけが特殊で、行動順は最後となり、ダメージにボーナスも得られないが、どのパラグラフの行動も妨害を試みることができる。

GM「皆さん、ダイスは決まりましたね? では、オープン!」
一同「……あれ、1がいない!?」(プロットの出目は2、3、4、5とばらけた)
GM「おや、残念。挑発は素通しですね」(微笑)

相談できないので、こんなこともある。パラグラフ1の挑発で防御は弱まったPCだが、攻撃に影響はない。
続くパラグラフ2を選んだPCは双六

双六「まず命中判定からですね。目標値は通常通り4でいいんですか?」
GM「脅威によってペナルティが加わることがあります。かみつくはペナルティなしです。脅威だけでなく本体も攻撃できますよ。ただ、脅威を攻撃しても脅威の耐久度までのダメージは、本体の生命力が減ります」
双六「なら……敵の攻撃を封じておきます。攻防一体というわけですしね。命中判定は……(ころころ)黒のインガのペナルティを入れても成功。ダメージは……(ころころ)7! 耐久度ぴったりです」
GM「先んじて牙に一撃を受け、かみつく機を失ったのでしょう。かみつくは発動しません」
一同「よし!」

パラグラフ3はナナ。選んだのは脅威「突進」の妨害だ。命中は危なげなく成功したのだが、ダメージが1足りない。ミケの想いを消費して、やはり辛うじて突進を封じ込めた(ミケナナちゃん、猫缶パワーにゃ!」ナナ「えー、私も猫缶はちょっと……」)。

ミケ「パラグラフ4はミケにゃ。行動はこれ使いたくてこの子を選んだので……メジェドビーム! 大火炎を妨害しますにゃ!」

メジェドは、バステトのギフトの一つ。式神のようにメジェド神を召喚し、その目からビームを放つという大技だ。メジェドは布袋から足だけが突き出たような姿のシュールな神様で、謎の神らしく謎な人気がある。

ミケ「出目は……あーん、足りない! 想いを使ってもダメにゃ……」
GM「その分、本体にはダメージは行きますよ。……では、脅威『大火炎』が発動。属性が赤でないPC全員が炎に包みこまれます」

大火炎は、技術による判定で防御できる。一番のダメージを与える攻撃とあって、PCも必死となった。想いを使ったり、技術の低いナナはギフト「黄金の二重冠」によって頭脳で判定を代替するなどして、なんとか全員成功に。誰か一人でもダメージを受ければインガが減るという追加ペナルティも避けることができた。

そしてパラグラフ5。最後の行動順を選んだメムノンは、ここで予言を公開した。

メムノン「フッ、実は私は新米の枠に収まらない強大なアマデウスだったのだ。これまでは実力を隠していたが、本気を出そう!」
一同「(……別に隠してなかったような)」
メムノン「トリガーは命中判定の前。効果は女神ガイアの大鎌で攻撃することで、出目5でも命中がスペシャルになる。スペシャルなら、毎ラウンド敵に継続ダメージも与え続けることができる。俺の真価を見よ……!」

仕込んでないダイス目

メムノンの出目は1・1・1! 参加者が記者・ライターばかりとあって「美味しい!」「絶対に仕込みだと思われる!」と記事が前提の発言ばかりが飛び交った。誰も悔しがらない

テーブルから悲鳴とも歓声ともつかない声が上がった。まさかの出目1・1・1。ぐうの音も出ないファンブルだ。実力はどこへ置いてきた。

ミケ「ちょっと待つにゃ! ミケも予言を公開する。実は以前、メムノンに助けてもらったことがあったの。まだバステトの声を聞く前、幼馴染の三毛猫とひもじい思いをしてた時に食べ物をもらったことがあって」
メムノン「なるほど。じゃあ、こんな感じか……こんな所で可哀想に。さぁ、わが社の猫缶を上げよう。うちにはいくらでもあるから好きなだけ食べると良い」
双六ナナ「普通の食べ物あげなよ!」
ミケ「あの猫缶は美味しかったにゃ。その恩を返すとき! ……身を呈してキマイラの隙を作る。効果は、出目1つを6に変えられるにゃ!」
双六ナナ「(……猫缶でいいんだ)」
メムノン「それならスペシャルだ! さらに武器の効果でスペシャルならばダメージがダイス2個分上昇する……いざ! (ころころ)お、出目高いな」

先ほどのダイス目を取り戻すような出目で、メムノンのダメージは40点以上。一気にキマイラの生命力をあと7まで削り取った。

PCも敵も行動し尽くしたため、第二ラウンドに。プロットは変更できないため、挑発が再び発動し、PCは新たに憤怒のバッドステータスを受ける(選べるムードダイスが必ず低い方の出目となる効果)。
しかし、キマイラの抵抗もそれまでだった。パラグラフ2でギフトも載せた双六の攻撃が魔獣にとどめを差したのだ。

GM「キマイラは倒され、幻影も消えました。障害もなく塔を上っていった皆さんの前に、獅子の毛皮をかぶった男性が表れます。アマデウスの偉大な先達であるヘラクレスです。彼は『良からぬ企みがあると知り、変装して見守っていたのだが……私が出るまでもなかったな。文句なしに試験は合格だ』と皆さんを褒めたたえます。
これで皆さんも一人前のアマデウスの仲間入りですね。セッション成功、お疲れ様でした!」
一同「ありがとうございました!」


駆け足でお伝えしてきた『アマデウス』のセッション、いかがだったでしょうか? 改めて正式ルールで遊んでみて、素直に楽しいの一言に尽きます。実は盛り上がり過ぎて、時間を大幅にオーバーし、河嶋先生がシナリオを縮める羽目になったほどでした。

神話というTRPGファンなら馴染み深い要素を中心に、現代社会を舞台としているため、キャラクターや世界観が理解しやすく、GM・プレイヤー双方ともに色々なアイデアが思いつきやすいのはTRPGとして大きな魅力です。一方、システムとしては、予言、インガ、脅威などの独特なルールがあるため複雑に見えますが、サイコロ・フィクションなどで採用してきたルールを『アマデウス』向けに再構成したものも多く、その処理は洗練されています。また、シート類によるサポートもあって迷うことなくゲームを楽しめました。

といっても体験会ということで、ルールの一部は省略されていたので、改めてプレイヤーとして、GMとして『アマデウス』の楽しさを再確認したいところですね。ただ、『アマデウス』はルールブックの発売にとどまりません。同日の新作発表会では『アマデウス』ファンには見逃せない今後の展開も多数発表されました。そちらも続けてご紹介しましょう!

さらに3月に追加ルルブ、イベントや企画も盛り沢山!

8月の発表から、スタートセット、体験版、体験会と駆け抜けてきた『アマデウス』ですが、これまでは助走にすぎないとばかりに次々に企画が展開していきます。

ラスクロコラボ

コラボレーション企画の一つ、TCG『ラストクロニクル』の神イェルズも『アマデウス』のデータに。『アマデウス02』に掲載される他、ユーザーコンベンションで先行配布される

12月19日に発売されたばかりの本作ですが、2016年3月20日には北欧神話をメインテーマとした追加ルールブック『アマデウス02 旋血ラグナロク』が矢継ぎ早に発売される。キーワードは“中二”と“神殺し”という『旋血ラグナロク』では、北欧神話の神々が使用できるほか、5レベル以上のより強力なアマデウスを作成したり、アマデウス同士で戦うなどの追加ルールも掲載するといいます。人気の高い北欧神話のこと、待ち遠しいファンも多いことでしょう。

12月19~26日には一週間限定のARゲームを開催し、全国のイエローサブマリンや、ロールアンドロールステーションといった専門店で、『アマデウス』の表紙を撮影するとポイント(インガ)を獲得。この貯めたポイントでモンスターを倒すという内容で、盛り上がりました。

続いて2016年2月下旬には、冒険企画局運営によるリアル冒険ゲーム『アマデウス』を開催予定とのこと。新作発表会の会場ともなったKADOKAWAのビルを会場に、参加者が主人公となって事件の解決に挑むもの。予言やインガなど、やはりTRPGのルールを取り入れた冒険ゲームということで、今から内容が楽しみです。

さらに、オンラインでも遊べるトレーディングカードゲーム『ラストクロニクル』とのコラボレーションも決定しています。『アマデウス02』に、この『ラスクロ』の神々のデータが掲載。また、リプレイで使用されたデータの一部を、新刊に先駆けてユーザーコンベンションに配布することも発表されました。『アマデウス』を遊ぶコンベンションを開催する予定があるなら、公式ページからぜひ申し込みましょう!(公式ページ/ユーザーコンベンション募集)

また、『ラスクロ』の2016年3~4月店舗大会では、『アマデウス』とのコラボPRカード「ウケモチ」が配布される他、3月末発売の雑誌『カードゲーマー』にもPRカード『ヘラ』が付録になるとあって、『アマデウス』も『ラスクロ』の両ファンには嬉しいコラボレーションが続きます。

新作発表会の檀上、河嶋先生は「今日ご紹介したように『アマデウス』では色々な試みをやっていきたいと考えています。また、お客様と共にゲームをもっと面白くしたいと思うので、ぜひ遊んで声を寄せてください」と意気込みを語りました。『アマデウス』の神話は始まったばかり。これからの展開が非常に楽しみです!

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