中でもTRPG every dayが見逃せなかったのが、まさかの初回生産特典「原作・志瑞祐完全監修TRPGルールブック」。こんな無茶な企画ありなの!? 衝撃を受けた私たちは、我慢できずに原作者の志瑞先生やゲームデザインを担当した備前氏に直撃取材を敢行。前代未聞の企画が実現に至った経緯や個性的なルールについて、本音ともども聞き出してきました!
作品紹介:精霊使いの剣舞
(著:志瑞祐、イラスト:桜はんぺん)
MF文庫Jより発行されている人気シリーズ。清らかな女性だけが精霊と契約し、精霊使いとして異能を振るえる異世界で、男性で唯一精霊と契約できるカゼハヤ・カミトの活躍を描く。既刊13巻で累計150万部を突破しただけでなく、漫画やアニメなどのメディアミックス企画も好評。そのラインナップとして、新たにTRPGルールブックが加わることとなった。
精霊使いの剣舞
■志瑞祐作品の背景にTRPG経験あり!
──アニメDVD特典がTRPGルールブックという異色の企画には驚きました。これは志瑞先生のアイデアでしょうか?
志瑞「僕自身、TRPGが好きなので、実現できれば面白いなと思い、編集さんに相談しました。実は、TRPG関連の特典は初めてではないんです。以前には、小説・コミックスの購入特典で作ったファンブック『そうだったのか! 精霊使いの剣舞』では、カミトたち主要登場人物をTRPGのキャラクターシートに似せて、D&Dのように能力値が分かる形で掲載したこともあります」
──D&Dというと、デビュー作の「やってきたよ、ドルイドさん!」シリーズの着想を得たのが、D&Dからだったとか。これまでどんなTRPGを遊んでこられたんですか?
志瑞「初めて触れたTRPGは、MAGIUS※の『だんぢょん大作戦!―スレイヤーズRPG』です。もともと原作が好きだったので、『面白そう!』と手に取ったのが最初でした。その時は読んで楽しんだだけで、実際にTRPGを遊んだのは大学に入ってからですね。TRPGサークルの仲間の趣味でD&Dはもちろん、シャドウラン、ウォーハンマー※をよく遊びました。『ドルイドさん』のヒロインも、D&Dで3年くらい遊んだ愛着あるキャラクターが原型になっています」
※「MAGIUS」は国産汎用TRPGシステム。文庫という購入しやすい形態もあり、オリジナル・原作付き作品を多数発刊した。
※「シャドウラン」はサイバーパンクとファンタジーが融合した近未来TRPG、「ウォーハンマーRPG」は中世の暗さや泥臭さを強調したダークファンタジーTRPG。どちらも海外発の個性的な作品として、根強い愛好家が多数。
──言ってはなんですが、かなりコアなTRPG経験ですね。
志瑞「当時は分かりませんでしたが(笑)。振り返ってみると、TRPG経験は作品のリアリティを考える上で力になってるなと思っています。ストーリーがご都合主義になっていないか、強引さがないか、心の中のGMに確認するんです。TRPGをはじめアナログゲームは今でも好きで、同じMF文庫の作家さん達と遊んでますよ。最近だと、グランクレストのリプレイ作品※にも参加させてもらいました」
※グランクレスト・リプレイ ライブ・ファクトリー「ニートな君主の竜退治」。志瑞先生をはじめMF文庫Jの作家陣がプレイヤー参加している。志瑞先生はニート君主を支えるメイドを担当し、原作に劣らずラブコメ力を発揮している。
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■カミトをGMが、ヒロインをPLが担当するTRPG
──では特典のルールブックの内容について、ゲームデザインを担当した備前さんから教えていただけますか。原作付きTRPGというと、通常のTRPGとは勝手も違いますよね?
備前「ええ、原作を読んで『一筋縄ではいかないな』と思いました。原作のストーリーには、ラブとバトルという二つの重要な柱があり、しかも主人公のカミトが図抜けた力を持っている。しかし、ゲームにする以上、彼一人に全てを片付けられてしまうと困るんですね。とはいえ、ゲーム作りには一切注文がなかったので、好き勝手に楽しく作らせてもらいました」
志瑞「TRPGにするには特殊な世界なので、制限が多いことは分かってました。ただ、備前さんが同人で出したTRPG作品を読んだことがあり、『この人なら』と安心して任せられました」
──ルールブックでは、主人公のカミトをどう位置づけたんですか?
備前「カミトは別格の存在で、彼をプレイヤーキャラクターとして登場させると、担当PL一人だけが主人公になってしまいます。これだとTRPGにはそぐわない。そこで、思い出したのがMAGIUSの『天地無用!RPG 天地争奪戦』でした。あの作品も主人公を中心にヒロインが主人公をトラブルに巻き込んでいくという典型的なラブコメストーリーですが、その再現のためゲームでは主人公をGMが、ヒロインをプレイヤーが担当する仕組みとなっていました。その構造を踏襲して、カミトをGMが担当し、彼を取り巻くヒロインをPLが担当すれば、差はできない、と考えました」
──ラブとバトルという二つの柱はどんなルールに?
備前「バトルルールでは、『剣舞とは何だろう?』ということから考え始めました。私の理解では、あの世界における剣舞は“舞”です。それを表現するには、単に一回の攻撃で終わるのでなく、攻撃が一連のシーケンスとして連続していくべきだと考えました。具体的には、1ラウンドに3回攻撃できるルールとし、1回目、2回目の攻撃を連続してヒットさせていくことで、威力が上昇していくルールとしました。
また、実験的なルールとして、戦闘中、他人の手番の時にもPLが暇にならないように、割り込みできる『フォロー』ルールを導入してみました。たとえば誰かの攻撃の達成値が足りない時に、他PLがフォローすることで攻撃を成功に変えられます。原作で言えば、クレアが鞭で敵を拘束して隙を作り、カミトが一刀両断するといった連携を再現できるわけです」
■ラブコメ主人公の大変さが実感できるゲーム
──『精霊使いの剣舞』に外せないラブコメはどんなルールに?
備前「今回のゲームはシーン制としました。シーンプレイヤーならぬシーンヒロインの希望に沿って、各シーンは展開します。通常、シーンプレイヤーはセッションクリアに向けて動くわけですが、本作ではもう一つルールがあります。それがカミトとの『ハプニングを起こす』こと」
──ハプニングというと、カミトと一緒にもつれ合って倒れたり?
備前「そうそう、水をかぶって服が透けてしまったり(笑)。このハプニングは単に義務というだけでなく、バトルで活躍するためのリソースを入手するチャンスでもあります。思い付かなかった時のためのチャート表も用意しているので、原作のようにラブコメ的なハプニングを次々に起こせます。
戦闘同様、この日常シーンでも非シーンプレイヤーによる割り込みが可能です。誰かがカミトと会って何かハプニングが起きた時に、それを目撃した別のヒロインがカミトをしばく!というシーケンスが繰り返されることで、ラブコメに次ぐラブコメという展開が再現できます。また、この割り込みによってハプニングを重ねると、もらえるリソースがぐんと増えるので、テストプレイでも自然とハプニングの連続になりました」
志瑞「僕も遊んでみて、すごく面白いと思いました。原作をシステマチックに再現していて、原作の世界に入り込んだような気分になれるんです」
──原作者の太鼓判付きとは期待が高まりますね。それに、PLだけでなくカミトを演じられるGMも楽しそうですね。
備前「楽しいけど、大変です。何度もテストプレイしていますが、段々ラブコメ展開に対応するのがつらくなってくる。『もう誰か一人になびいて楽になった方が良いんじゃないか……』という気分に。あの誘惑に抵抗できるカミトはすごい精神力ですよ」
志瑞「ラブコメ主人公の気持ちになれますね。実はハーレムはつらい(笑)」
備前「テストプレイ中で一度、終盤のハプニングでクレアが割り込んできた時に、『焼き方はレアでお願いします……』という発言が自然に口を突いて出たこともありました。でも、原作のカミトなら『違う、誤解だ!』と最後まで抵抗しますよね。私には無理、途中で悟り開きそうでしたもん。皆さんにはぜひGMをして、ラブコメ地獄を味わってほしい(笑)」
■原作はクライマックスに向け、スケールを拡大
──何から何まで新機軸のTRPGですね。それにしても、志瑞先生もテストプレイに参加されていたんですね。ちなみにメンバーは?
志瑞「ライトノベル作家の皆さんを招いてテストプレイしたんですよ。僕がフィアナ、H先生がエスト、T先生がリンスレット、S先生がクレアを担当しました。H先生が恥ずかしがりながらもエストを演じてくれたのが印象的でしたね」
備前「エストは寡黙なキャラなので演じやすいのですが、反応表に『カミトは淫獣です』と言う、なんて結果があったり(笑)」
志瑞「この時のセッションの様子も何らかの形で、読者の皆さんにお届けしたいと考えています」
──そちらの公開も楽しみにしています。このルールブックですが、DVD1巻で基本ルールブックが、2巻以降も「エッセンス」というサプリメントが特典となるとか?
備前「2巻に付くエッセンス1はシナリオメイキングを主としたサプリメントです。あくまで特典ですのでサプリメントは多く出せません。なので、一冊でできるだけ多くのシナリオを遊べるようにと考え、現在制作中です。
3巻特典のエッセンス2はさらに踏み込んで、オリジナルキャラクターの作成ルールを考えています。たとえばGMをカミトでなく、学校の女生徒にして百合なハーレムものとして遊んだり、カミトを取り巻くヒロインをすべてオリジナルキャラにしたif世界を楽しんだりと、幅を広げるサプリメントにすべく検討を進めています」
志瑞「そのルールを使って、『僕の考える最強の精霊使い』を募集するのも楽しそうだなと考えています」
──アイデアが広がるばかりですね、今から発売が楽しみです。最後に、原作ファンが何より気になっているだろう、今後の展開について教えてもらえますか?
志瑞「これまでは、学校を中心としたスポ根的な話でしたが、カミトたちはついに国を飛び出して、ストーリーのスケールも大きく広がっていきます。ラストまで駆け抜けますので、カミトやヒロインの活躍を楽しみにしてください。また、精霊使いの剣舞TRPGは、世界観だけでなく原作再現度が高く、しかもシンプルで遊びやすいシステムです。TRPGを遊んだことのない人でもベテランでも楽しめる内容になっているので、原作、アニメと合わせて楽しんでもらえればうれしいです。今後も『精霊使いの剣舞』をよろしくお願いします」
という充実したインタビューでした! 志瑞先生はどんな質問にも気さくに回答してくれただけでなく、会話の端々に強いTRPG愛が見え隠れ。「道理でTRPGルールブック付きDVDなんて無茶な斬新な企画が飛び出すわけだ」と納得させられることばかりでした。志瑞先生、備前さん、インタビューにご快諾いただきまして、ありがとうございました!
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