同人誌と思えない人気ぶりのハードSFTRPG『ガラコと破界の塔』をご存知ですか? 戦闘メカ「ガラコ」を駆るロボット物としての魅力はもちろん、ハードな世界観がシビれちゃう作品なんです! 舞台となる植民惑星「ノルヴァ17」は、惑星改造のための無人機械が狂った挙句、人類の敵となって人類の生活圏を日々狭めているという明日をも知れない状況。タイトルの「破界の塔」は、そんな無人機械の拠点を意味し、その塔の破壊がPCたち「ガラコ乗り」の仕事になります。こんなTRPGを思いつく人は、さぞや“尖った”人物に違いない──という思い込みの下、制作サークル「ロンメルゲームズ」の代表ブラフマンさんにインタビューしてきました!
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■『ガラコ』は「英雄でない一般人が闘うRPG」

新作『ガラコと黄昏の大地』はこかげ書店で先行予約受付中

新作『ガラコと黄昏の大地』はこかげ書店で先行予約受付中

──今回は、同人誌として破格の評判を誇る『ガラコと破界の塔』(以下、『ガラコ』。PCが登場するメカ「ガラコ」はカッコなしで表記します)を制作したブラフマンさんにお話を伺う機会を頂きました。

ブラフマン「ドーモ。ブラフマンです。射狩矢仗助名義で『ガラコと破界の塔』を制作した張本人です」

──早速ですが、新作『ガラコと黄昏の大地』(以下、『黄昏の大地』)の位置づけについて教えていただけますか? 『ガラコ』の世界は、新サプリでどう変化するんでしょうか?

ブラフマン「最初のサプリメントなので、「基本ルールブックの足りなかった部分を補う」ことに主眼を置いています。『ガラコ』をD&D赤箱とするなら、『黄昏の大地』は青箱に相当します。ダンジョンを探索するだけのゲームが、その枠に収まりきらなくなって、都市などダンジョン以外の設定が付加されるわけですね。しかし基本的に破界の塔を攻略する、という部分は変わっていません」

D&D 赤箱、青箱:TSR版『ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ 第4版』。改訂者はフランク・メンツァー。日本語版は株式会社新和より発売された。低レベルのキャラクターを扱うベーシックルールは赤い紙箱に梱包されていたことから「赤箱」と呼ばれて親しまれた。そのエキスパートルールも同じくパッケージから「青箱」と通称された。

──サプリメントで世界を広げるという構想は、基本ルールブックの時からあったんでしょうか?

ブラフマン「いいえ、コミケなどで商品を買ってくれたお客さんや、ネットでの感想をチェックした結果です。『世界観が好みだ』という感想が特に目立っていたんです」

──反響すごいですよね。私もときどき検索してみてるんですが、中でも実際に遊んだことをツイートする方の多さに驚きました。商業でもそうですが、TRPGは買ったものの遊ばれないケースも少なくないようなので。

ブラフマン「実際に遊んでもらうところまでこぎつけるのはとても難しいですね。前作『ヴィジョンズ』を遊んでくれているユーザーもいるんですが、勢いという点では『ガラコ』が圧倒的に強いですね」

ヴィジョンズ:『ヴィジョンズ ジ・アンリアル=ホラー』は、現代日本を舞台に、自らの精神力を具現化させた“アンリアル(幻像)”を駆使する異能者たちの戦いを描く現代異能TRPG。『ガラコ』と同じロンメルゲームズ制作の同人誌。

──では、ガラコでぐんと反響が増えたわけですね。失礼な表現ですが、『ヴィジョンズ』は、その後書きでも書かれているようにジョジョ的な現代異能が飛び交う世界で、それほど独自性が高い作品とは感じませんでした。もちろん、ルールブックの作りは、サンプルキャラやサマリーなど必要な物をきちんと盛り込んだ商業ルールブックのような完成度を誇る作品という印象を持っています。一方で、今回のガラコは、内容の絞り込みといい、世界観といい、作品のコンセプトに大きな変化があったように感じました。この辺りの変化の理由というのは何かあったんでしょうか?

ブラフマン「TRPG市場をつぶさにチェックし続けた結果、『不足している』と感じたものを作ったんです。砕けた言い方で言えば、『自分が欲しいのに、売ってない物を作った』ということです」

──好きでつくるというのは、実に同人活動らしいですね。欲しいものというのは、ロボットやシビアな世界観でしょうか?

ブラフマン「いえ、『英雄でない一般人が闘うRPG』という点です。メカ物が求められていることも感じていたんですが、『ガラコ』はメカが第一にあるわけではありません。メカを操って闘うようにしたのは、部位判定で腕や足をもがれながらも闘うビジュアルを想像しやすくするためでした」

──パーツが破損していくというのは、イメージとして分かりやすいですし、ピンチも明示的になりますよね。また、『ガラコ』だとどうしてもお金と縁が切れないので、修理費などの不安もちらつく。こういうのは英雄ならざる一般人ならではの悩みですね(笑)

ブラフマン「『ガラコ』でお金が幅を利かせるのは、報酬を単一化したい、という狙いがありました。経験点とお金の両方を成長要素にしてしまうとバランスを取るのが難しくなるので、成長も生活費も装備も、お金で解決できるようにしたんです。個人的には、情報をお金で買うようにしたところが特に気に入っています」

──サンプルシナリオでも、クリティカルな情報が売られていて驚きがありました。情報を買って準備できるか否かが、塔攻略の成否を大きく左右しますよね。

ブラフマン「情報収集を含めて、セッション中に『何を買うか』をプレイヤーが自由に選ぶ時間を設けたかったという理由もあります。多くのTRPGでもあり得ることですが、GMは常にゲームの中心にいるので「一部のプレーヤーがゲームに参加できていない」ことに気づかないことがあります。GMって、自分が喋っただけで仕事をした気になってしまいがちなんです。それでは困る。だから、プレイヤーが自分で考え、自分で行動を選び取るフェイズが必要なんです。その一例が『買い物をする時間』なんです。パーツを買ったり情報を買ったり、限られたリソースの中でプレーヤーが『選択する』ことが大事だと思うのです」

──なるほど、そうするとプレイヤー同士の掛け合いも自然と生まれますし、悩む、選択するというのはゲームらしい楽しみでもありますよね。

■新要素続々のサプリメントは世界の存在感を強化する

──話を新作に戻して、今回追加される要素について伺わせてください。まずは新種のメカ「ビット」。これはガラコのようにPCが乗り込めるメカなんでしょうか?

ブラフマン「ビットはあくまで敵ですね。ドローンの一種で、やや小型。ガラコとのパーツの互換性はない代わりに、部位判定のないメカです。『ガラコ』で登場する敵ドローンは一体一体が複数の部位を持ち、戦闘時のGMの負担が大きめだったので、それを軽減する狙いがあります。大量にビットを出しても処理は苦にならないと思います」

新作サプリに登場する敵メカ「ビット」の一種、「コーンノーズ」。超接近戦用と思しき男らしすぎるフォルムが目を引く

新作サプリに登場する敵メカ「ビット」の一種、「コーンノーズ」。超接近戦用と思しき男らしすぎるフォルムが目を引く

 

──では、もう一種、クリーチャーという新しい敵も増えますよね。こちらはどんな敵になるんでしょうか?

ブラフマン「天蓋都市の外に徘徊する生き物たちですね。とても奇妙な形をした、所々間の抜けた生き物たちです。今回フィールド移動ルールが加わるので、ランダムエンカウントなどで活躍してくれることと思います。黒い霧の影響により変異した生物や、他の惑星から無理やり連れて来られた、四本の鼻で歩く鼠とか」

──ああ、鼻行類! それはハードな世界観の中の癒やしになりそうですね。敵なんでしょうが、ペットとかにできたら、それはそれで楽しそう(笑)

鼻行類:鼻で歩く架空の生き物。動物学論文のパロディ作品として生み出されて以来、そのユーモラスさを愛されている。

ブラフマン「ただ殴り合うためのデータじゃなくて、その世界で生きていることがイメージできるかどうかが大切だと思います。ソースブックではちょっぴりイラスト多めでお送りします」

──そうしたクリーチャーをはじめ、天蓋都市の外の設定やフィールド移動ルールが追加されると、GM・プレイヤーにとっては文字通りに世界が広がりそうですね。あとは、やっぱり関心の高そうなところで、ガラコのパーツは増えますか?

ブラフマン「もちろんパーツのデータは増えます。ただ、確かにPCが強くなるデータも入るんだけど、そこは制作側としては重要じゃないんです。重要なのは、世界設定や描写、ビジュアル部分。書割りじゃない存在感の部分に価値を見出していただければ、と考えています。PC強化サプリじゃないクトゥルフ神話TRPGのサプリメントが増刷され続けるように、『ガラコと黄昏の大地』も気に入っていただければな、と思っています」

──ノルヴァ17の世界観がより強化されるサプリメントなんですね。ビジュアル部分というと、イラストがかなり多いんでしょうか? 表紙もそうですが、『ガラコ』のイラストも魅力的でした。

ブラフマン「ソースブックはビジュアルを全面に出したいと思っています。中でも見ていただきたいのが、ガラコの解体図です。完全にバラバラにする、というよりは、工場の中でガラコを組み立てている最中のイラスト、ですね。関節部分まで完全に3Dイラストになっています」

──あれ、有志の方でガラコを3Dモデリングしている方もいましたよね。もしかして?

ブラフマン「ええ、その方です。イラストレーターである東 剛士(あずま つよし)さんという方で、色々相談しながら作りました」

──その方なんですね! 良い作品が生まれて、それを応援したいと思う人がいて、世界がさらに広がっていくというのは理想的な拡大ですね。ヴィジョンズでも腕のある皆さんがチームで制作している印象を受けたんですが、『ガラコ』の制作には何人ぐらい関わってるんでしょう?

ブラフマン「奥付には色々名前が載っているんですが、半分はジョークですね(笑)。『ガラコと破界の塔』に関しては、ライティングは僕一人です。『ガラコと黄昏の大地』では、ライターの関根博寿さんにシナリオ作成を依頼しました」

『ガラコ』奥付記載のスタッフリストには「射狩矢仗助」などどこかで見たような名前が並んでいる。

──意外に少人数体制だったんですね。とはいえ、3Dイラストの東さんのように、どどんとふでもガラコ用データを上げている人がいたり、草の根の応援団が多い印象があります。近々、リプレイ動画を上げてくれる人も出てきそうですね。

ブラフマン「ロンメルゲームズはリプレイ動画全部OKです。細かいことは一切言わないので、好きにやってください。と言って、誰もリプレイ動画アップしてくれなかったら恥ずかしいですね(笑)」

──ガラコのリプレイ動画、見たいですね。この記事でウェルカムだと書いたら、誰かやってくれそうな気がする(笑)

実はありましたガラコの動画! この独特の世界観を見事に調理した第一話。次話はまだでしょうか……(チラッ)

■シナリオ集にフィギュア──驚きの展開が続々!

「誰も彼もが"待っている"」のコピーが目を引くサプリメント裏表紙

「誰も彼もが”待っている”」のコピーが目を引くサプリメント裏表紙

──では、ソースブックのコピーである“待っている”の通り、新作はもちろん次の展開を“待っている”ファンも多いと思います。東さんのように新たなパートナーが増え、さらに世界が広がるノルヴァ17ですが、今後の展開について教えていただけますか?

ブラフマン「計画はいくつかあります。まず、しばらくは『ガラコ』に集中します。『ガラコ』は幸いなことに購入者の方々に気に入られて販売数も増え、2刷も順調に売れ続けています。ただ、それに甘んじて防御に回ることはしたくないんですね。
そこで、シナリオ集を作りたいと考えています。シナリオ集というと「ルールブックやサプリメントほど売れない」というイメージが強いでしょうが、だからこそ作りたいんです。売れるかどうかは分かりませんが、面白いものを作る自信はあります」

──ソースブックにシナリオ集が加われば、遊び方のバリエーションもぐんと広がりますね。GMがオリジナルシナリオを作成するヒントとしても需要はありそうに思います。

ブラフマン「そう期待したいですね。もう一つ、計画している新展開は“フィギュア”です」

──フィギュア!? メカとフィギュアの親和性はばっちりですし、セッション中のコマとしても嬉しいですが……予想外のお話で、驚きました。

ブラフマン「メタルフィギュアとはいかないかもしれませんが、ゲームで使えるミニチュア、もしくはキットといったものが企画できないか、東さんと相談しているところです。東さんは元々、ワンフェスにも参加している方で、その分野にも造詣が深いのです」

──それは頼もしい。フィギュアのクオリティの高さも期待できそうですね。

ブラフマン「やはりメカ物のTRPGをやるならフィギュア化、キット化は最初から想定に入れるべきだ、というのが僕の考えです。東さんがデザインしたガラコは、それに耐えうるデザインですよ。パーツ数が多くなりそうですけどね(笑)」

──フィギュア化計画も具体化して公表できるようになったら、ぜひ取材させてください。個人的にもいち早く見てみたいので(笑)
では、最後に『ガラコ』のファンの皆さんにメッセージを頂けますか?

ブラフマン「『一般人が闘うことが重要』というテーマは、あまりピンとこない方もいるかもしれません。その疑問は『ガラコと黄昏の大地』をお読みいただければ、分かっていただけるのではないか、と思います。このゲームのPCは英雄ではないし、決して英雄にはなれない。でも悲観的になる必要はないんだよ、というのが『ガラコ』全体のテーマなんです。新作のサプリメント、そして今後の作品もぜひ手に取って楽しんでみてください」

──私たちが実際に生きる現実にも通じますね。今回のソースブックも本当に楽しみです。お忙しい中、ありがとうございました!

[ディベロップチームの参加者募集!]

ブラフマン「言いたいことがもう一つ! 今年はログ・ホライズンの躍進が特に目立った年でした。ログ・ホライズンのクオリティの高さは、ディベロップチームの力によるところが大きいと思います。ロンメルゲームズの体制はまだまだ貧弱ですが、ああいうディベロップチーム作りが理想だと考えています。これは他の同人ゲームデザイナーの皆さんも感じていることではないでしょうか。
だから僕は呼びかけたい。『同人ゲームに興味のある方々に、一緒にディベロップする場を作りませんか?』と」

──それは、具体的に集まって創作する場、のようなものでしょうか?

ブラフマン「人数が集まれば、定期的に施設も借りられるし、ディベロップを強化できます。中でも大事なのは定期的に集まることです。たとえば月1回とか。TRPGは、セッション後の食事までを含めてTRPGだと思います。一応言っておくと、オンセも好きですよ(笑)
こうした試みに興味がある方は僕に連絡をください。これからの時代はディベロップチームが前面に出てくる時代になるといいな、と思います」

──面白い企画ですね。ちなみに開催場所はどの地域をお考えでしょうか? また、ネット参加も可能ですか?

ブラフマン「ディベロップの集まりは、都内を考えています。もちろんオンセって方法も捨てるべきじゃないと思います。関東以外にご在住の方でも、ネットを通じてディベロップに参加・協力できるなら声を掛けてください。『ガラコ』に限らず、ディベロップに協力してくれる人間を集めやすい環境をつくり上げること、それが今回の呼びかけの趣旨です。TRPGですらなくてもいい。ボードゲーム、カードゲームを作りたい人だって沢山いて、でもテストプレイに参加してくれる人を捜すのに苦労している。その場を提供できるようになるなら、それは絶対意味があるはずです」

──単に、ブラフマンさんと一緒にものづくりをするのでなく、呼びかけに応えた人が自分のものづくりに協力してくれる人を探せる場でもある、ということですか?

ブラフマン「そうです。テストプレイに参加したい人、自分のゲームに参加してもらいたい人、両方いるはずなんです。でもそういった方々が集まるための場を作れればと思います。まずは焦らず、できるところから一歩一歩進めていきたいと思うので、興味ある方、連絡をください」

■募集概要:
目的:TRPG、ボードゲーム、カードゲームなどのディベロップチームづくり
集合場所:都内(新宿近辺を想定)
集会ペース:月1回など
Webのみの参加:OK
連絡先(Twitter):@Garrotte2000

先行予約受付中の新作『ガラコと黄昏の大地』を購入するならこちら!

ガラコと破界の塔の制作サークル「ロンメルゲームズ」公式サイトはこちら。FAQなどサポートも充実!

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