TRPGは正解のないゲームです。
さまざまな趣向や目的、メンバーによって楽しみやすいシステムは異なるもの。TRPG好きの皆さんが案外知らないシステムの中に、相性ぴったりのシステムが眠っているかもしれません。こかげ書店ではTRPG全面肯定主義の下、さまざまなTRPGの個性と魅力をずずいっと紹介していきます。あなたの最適システムはここにある!かも?
第二回は、ダイスなどのランダム性や戦闘のない、ほのぼのあったかろーるぷれいんぐ「ゆうやけこやけ」です。
人に化けることのできる動物「変化」となって、町の人々や他の変化などと交流しながら日常を紡ぐ、ちょっと変わったTRPGをご紹介します。
※第一回は、ファンタジーTRPG「秘境伝説ミスティック・ブレイズTRPG」 。ご興味あればこちらもご覧ください。
夕刻といえば、昼と夜の境目。淡い西日の中ではっきりとした昼の世界がほどけていく、逢う魔が刻。
ただ、TRPG「ゆうやけこやけ」で出てくるのは恐ろしい怪物ではなく、人に化けることができる優しい動物「変化」です。同名の童謡に歌われるような優しくも寂しい──ノスタルジーを刺激させられる田舎町を舞台に、プレイヤーは変化となって町の出来事を解決したり、誰かの手伝いをしたり、見守ったりすることになります。
◆変化の力となる「想い」と「ふしぎ」というリソース
この優しい世界に戦闘のようないさかいはほとんど起こりません。サイコロのようなランダム性を持つ要素もありません。大事なのは「想い」を込めること。
行動の成否を決めるような判定を行う場合、PCたちは能力値が、GMの定める必要値に足りなければ、その分の想いを使えば、判定を必ず成功にできます。
また、主役となる変化の正体は、狐や狸、猫、犬などのなじみ深い動物たちです。表紙にも狐耳や狸耳、猫耳の子がいますよね。
こんな風に人に化けるだけでなく、その動物らしい不思議な能力を備えています。
たとえば狐なら、尻尾の先を火の玉のように見せかけておどかす「ひのたま」や、小雨を降らせる「きつねのよめいり」、狸なら、木の葉やドングリをお金に見せかける「おかね」や、茶釜や岩などに化ける「なんでもへんしん」など。
また、変化は動物らしい弱点を一つは持っており、その代わりに使える追加能力もあります。こうした不思議な能力を使ったり、人に化けるには「ふしぎ」を使います。
ちなみに、誰かを傷つけるような能力は一切ありません。「ひのたま」も人をおどかすのがせいぜいなんです。
◆想いとふしぎを支える「つながり」
「想い」と「ふしぎ」という2つのリソースを生み出すのが、「つながり」です。
つながりは、登場する人々=NPCや、居場所である町と結ぶ感情や思い入れとも言い換えられるもの。ゲームでは場面(シーン)が変わるたび、PCが結んだつながりを合計しただけ、「想い」と「ふしぎ」が増加します。 変化は思い入れのある人や場所に支えられて、強い想いを得たり、ふしぎな力を発揮するわけです。
この「つながり」は場面と場面の合間に「夢」を使うことで深めることができます。
「夢」はPCが良いロールプレイをしたり、誰かを救ったり癒やすような行動をしたと思った時に、そのプレイヤー以外の参加者同士で与えるもの。数に限りはないので、GMだけでなく、プレイヤーももちろん「いいな」と思ったら、その場面にPCが登場していなくても、どんどん「夢」を与えていいんです。だから遊んでいると、みんなが自然と優しいロールプレイをするようになっていきます。
私も遊んでみて分かったのですが、参加者が温かく、優しくなれるつくりになってるんですね。一度遊んでみると、どこか懐かしくも不思議な日常を過ごす、独特の楽しさを発見できると思います。モンスター徘徊するダンジョンや、異能渦巻く学園も良いのですが、田舎町を舞台としたTRPGを一度遊んでみてはいかがでしょうか?
ちなみに、「ゆうやけこやけ」は現在の版元さんでの出版権が来年3月までで切れるそうです。こかげ書店ではシリーズ全作扱っていますので、ぜひご利用ください。
TRPGゆうやけこやけ15年3月にサンセットゲームズから販売停止
こかげ書店「ゆうやけこやけ」ラインナップ
TRPGの質問・疑問に答えるチャットを開設しています。お気軽にご参加ください。
→TRPG チャット