本ルールは、既存のTRPGシステムに追加ルールとして採用し、半GMレスでセッションを行うためのルールとなります。以降、当追加ルールを「dixit TRPG」、追加元のシステムを「システム」と称します。

このルールを採用することにより、プレイヤー全員がGMに近い権限を得、物語を直接コントロールできるようになります。また、GMの負担が極端に減り、円滑なセッションが可能になります。

dixit TRPGを使ったネクロニカセッションのリプレイを作成しました。どういう感じになるのか確認したい方はこちらも御覧ください。
半GMレス追加ルール「dixit TRPG」適応ネクロニカリプレイ「籠の鳥」 – TRPG every day

概要

カードを使い、そこから全員でシーンを考え、メンバーの誰かが語り手(GMに近い立ち位置)となりシーンを描写する。

PLとPCの切り離しが自然とできる。

全員で語り手を交代していくため、一人ひとりの負担が少ない。

PLの対応に語り手が困っても、気軽にギブアップして次のシーンへと回すことが出来る。

GMもPCを作り、一緒にセッションに参加する。全員がPLとなって同じレベルで物語を楽しめる。

語り手にシーンを任せられるので、GMは落ち着いてセッション全体のスケジュールを調整できる。

GMはPCとして参加者をコントロールすることが出来る。

セッションへの途中参加・中途退場が可能。

GM練習として参加者全員が経験を積める。

突発力・発想力を鍛えられる。

少人数セッションでも楽しさを維持しやすい。

皆で次の展開を考えていく楽しさ。

参加条件

dixit TRPGを遊ぶには、参加条件が少しばかりあります。これは、dixit TRPGがロールプレイ・物語へと重きを置いているため、そこに面白さを見いだせないプレイヤーにとってはセッションを楽しめない物となってしまうからです。

・ロールプレイが好き
・皆で一緒に物語を作るのが好き
・チャット速度にある程度自信がある(オンセの場合)
・戦闘がない場合でも満足できる
・アドリブでも対応できる

このルールでは、いわゆる地蔵プレイや、チャット速度が極端に遅いプレイヤーをGMからスポットを当ててあげる事はできません。また、流れによっては戦闘もなくなってしまうため、戦闘を楽しむためにセッションへと参加する人も楽しめません。本追加ルールを採用してセッションを行う場合は、必ず上記条件を提示しましょう。

用意するもの

このTRPGを遊ぶには、dixitというボードゲームか、深淵というTRPGシステムどちらかが必要となります。ともにカードがあり、これを利用します。

どどんとふで遊ぶ場合、深淵のカードは元々搭載されているため、そちらを使うとよいでしょう。

事前準備

GMは、今回のセッションで使う敵キャラクターを「一応」用意しましょう。システムにあるサンプルシナリオの戦闘部分を丸写しや一部改変程度で十分かと思います。物語次第で敵は変わると思いますが、キャラ・武器・アクションの名前をそれぞれその時に合わせて軽く変更して運用すれば問題は無いでしょう。

あとは、dixit TRPGで使うカード、物語ポイント、システムごとに必要な準備を行いましょう。シナリオの用意は必要ありません。

物語ポイントについては後で解説しますが、オフセならチップ、どどんとふならリソースやチットで参加者一人につき10個ずつ用意します。

遊び方

最初に軽くdixit TRPGの解説を行います。以下の文言を読み上げるといいでしょう。

「このセッションでは、GMはほぼ機能しません。GMもPLとして一緒に遊びます。全員で物語を作っていきます。物語が停滞したり、次の展開が思いつかなかった場合はGMとして顔を出しますので、気軽に好きなように物語を動かしていきましょう。例えば判定に大失敗とかして、『はわわ、どうしよう』となっても、GMにぶん投げてもらって構いません」

細かなdixit TRPGのルールについてはまだ説明しなくても問題無いです。

以降、あえて「GM」と区別していない限りは、その場にいる全員を対象とした説明となります。「参加者」が指すのはその卓にいる全員のことです。

キャラクター作成

といったところで、まずはキャラクター作成から行いましょう。通常通りキャラクター作成を行ってください。

ここで、GMもPCを作成する事を宣言します。GMのキャラクターはPC達と共に一緒に行動します。

PLが3人以上だった場合GMのPCは戦闘には参加せず、GMは敵の処理に回ります。GMのPCは敵に捕らわれる、戦闘不能に陥るなどの戦闘へ入るためのフックとしても使えるとPLへ教えておきます。

PLが二人以下だった場合、GMもPCとして戦闘まで参加します。これにより、少人数でも円滑にセッションを進行することが可能です。敵の行動は、ダイスで攻撃対象を決めたりするといいでしょう。

ここで、全員がdixit・深淵カード(今後は物語カードと称します)を一枚ずつ引きます。カードは基本的にオープンで全員に見えるように机に置きます。以下の文言を読み上げます。

「このカードは、今回のセッションの皆のハンドアウトです。それは貴方の名前・未来・目的・性格・暗示です。どう解釈しても構いません。通常のキャラクター作成に加えて考えてください」

dixitカード

dixitカード

dixitカードで運用した場合、このような抽象的というか暗示的な絵が描かれています。

深淵カード

深淵カード

深淵カードで運用した場合も同様、なんとも暗示的な文章が語り部という項目に記述されています。

また、どどんとふには「Itras By」というシュルレアリズムを楽しむTRPGのカードも収録されているらしく、場合によってはこれを導入しても楽しいかもしれません。かなり具体的な無茶ぶり要素があるので、ファンブルやデメリット要素として突発的に引くように使うとセッションを盛り上げる機構になるかも。

さて、キャラクターが完成したら、カードを皆に見せつつキャラクターの紹介をしていきましょう。

セッション開始の前に

導入を始める前に、dixit TRPGのルールについて解説していきます。

まず、参加者全員に物語ポイントを10点ずつ配ります。どどんとふの場合は、下記画像のようにそれぞれのプレイヤーの下にチットを作成すると良いでしょう。オフセの場合はコインやチップなどで。

この物語ポイントは、ゲーム自体に一切影響を及ぼしません。0になっても何らからのデメリットは発生しません。お互いのロールプレイや判定やアクションについて、「今の良かったよ!」と思うなら気軽に投げていきましょう。頑張って良いロールプレイや行動をすると、沢山物語ポイントが貰えます。沢山貰えると、嬉しいですね? ポイントを投げるタイミングはいつでもいいです。良いロールをした瞬間に投げてあげてもいいですし、シーンの合間に投げても良いです。参加者のやりやすいようにそれぞれのやり方でいいと教えてあげると良いでしょう。

最終的に、この物語ポイントが全員大体10ポイントずつに落ち着いたら、セッションを皆同じくらい頑張った。という事で大成功になります。

GMは試しに、キャラ紹介で「いいな」と思った人にいくつかポイントをこの時に投げてあげると良いでしょう。

セッション開始

まず、ここで遊ぶ時間を決めます。戦闘がある場合システムによりますが、大体1時間として、それを差し引いたシナリオパートの時間を計算します。ケツまで五時間あるなら、シナリオ三時間、戦闘一時間、エンディングその他で一時間、という感じで最初に取り決め、その通りに動くようにしましょう。大体戦闘まで30分前くらいになったら、物語をたたみに行くように意識するとうまくいくかと思います。

また、戦闘への導入はGMが行うので、語り手はそこまで意識したり気負わなくていいと伝えておくと良いでしょう。

といった所で導入に入ります。物語カードを一枚出し、皆に見せます。それがこのセッションの導入になります。それは一体何を表しているでしょうか。抽象的に受け取ってもいいですし、それが出てくるとも、それが何なのかを考えても良いです。

自分たちは捕らえられている、今から捉えられる。そんな感じですか。皆がそれぞれ好きなように色々言った後で、語り手を決めます。語り手は通常のセッションで言うGMと同じことをします。シーンを描写し、物語を進めます。判定が必要なら判定を促します。

いきなりは勝手がわからないので、最初はGMが語り手を担当します。皆が考えた言葉を汲み取り、シーンを作ってあげると良いでしょう。

語り手が決まったら、参加者は語り手へ2物語ポイントを投げます。自然と語り手はたくさんのポイントが集まるので、シーン中は積極的に皆に物語ポイントを配るといいでしょう。

導入として、基本的にはそのシステムのサンプルシナリオの物が参考になるでしょう。少しアレンジするくらいで良いかと思います。全員がそこにいる状態で、仲間になる所から始めるようにすると良いかと思います。

注意として、参加者はできるだけそのシーンから外れないようにすると良いかと思います。バラバラに動くと語り手が処理しきれませんし、一度外れると流動的に動く道筋に戻るのも大変になります。GMは、バラバラに動くPCをまとめあげるために動く事はできません。

逆に言うと、dixit TRPGでは一切のPCへの制限がかかりません。セッションの途中でキャラクターが死ぬ事も、逆に途中から参加する事も可能です。そして語り手は、そういったキャラクターの行動に対して処理をする必要はありません。語り手はあくまで物語を先導するだけです。なので、基本方針として全員が出来るだけ一緒に行動する事を推奨しますし、語り手は単独行動するキャラクターに対してスポットライトを当てる必要はありません。

単独行動をするPCに対しては、担当する参加者が自分の裁量でシーンを描写してください。

ある程度やりとりをして次の展開が欲しいなと思ったり、参加者のロールプレイに語り手が何も思いつかなくなったり、どうしても何もできなくてギブアップしたら次のカードをめくります。これはGMの判断でやってもいいですし、参加者の誰かが次をめくろうと提案してもいいです。そうやってまた自由に相談し、語り部を決めて、次のシーンを紡いでいきます。ギブアップしたからといってデメリットは何もありません。気軽にギブアップして、気軽に語り手になりましょう。

シーン中、判定が必要だと思うタイミングが来たら、参加者が自ら判定を行うと良いかと思います。逆に、判定が必要ないなと思うならしなくてもいいかと思います。一人のキャラクターの行動に対して、他の参加者が「いや、それはこの判定をした方がいいんじゃないか」と思うなら、判定を促せば良いかと思います。

もちろん、語り手が判定箇所を作り、判定を促しても問題はありません。

基本的に、これがdixit TRPGのルールの全てです。

戦闘

戦闘に入ったら、戦闘に入る前にも物語カードをめくります。ここで、通常ならGMが語り手となり、戦闘の敵側を担当します。戦闘中、語り手のキャラクターは戦闘には参加しません。敵に捕らえられたなど、その時にあった描写をしてから戦闘に入ると良いでしょう。もしもGM以外の人が語り手をやりたいと進言してくるなら、その人に語り手役を譲ってもいいでしょう。

また、対立していてお互いに戦う状況になった場合は語り手を設定せずにお互いに対戦するようにしましょう。ただし、システムとして対立がサポートされていない場合はあまりおすすめはしません。もし対立する場合は、基本的には敵側が負けやすいように戦力を調整するようにすると良いかと思います。

PLが二人以下だった場合、GMのPCも戦闘に参加させると良いでしょう。この時、このPCの運用はPLにまかせてもいいですし、GMが動かしてもいいです。システムの戦闘負荷により決めてください。

戦闘中でも、物語ポイントのやりとりは継続して行われます。

エンド

戦闘も終わり、エンディング処理も全て終えたら、最後にお互いのセッションへの姿勢を讃え合いましょう。ポイントを好きなだけ投げ合います。

その後、全員の物語ポイントの数を比べます。大体平均的な点差だったらセッションは皆頑張ったいいものだと言えるでしょう。やったね!

最後に、それぞれでdixitカードを引き、その後キャラクターがどうなったかを皆で考えるのも楽しいと思います。

一つのTRPGの楽しみ方として

この追加ルールは、あくまでもTRPGの一つの楽しみ方としてのルールにすぎません。このルールを追加したからといって、必ずセッションが楽しい物になるとは限りません。ある意味で、ロールプレイ・キャラクター至上主義なルールになりますので、そう聞いて「うわあ」と思ったり、本ルールの説明を読んで「こんなの運用できるわけがない」と思った方には根本的にTRPGのプレイスタンスが合わないものとなるでしょう。

状況に対してのとっさの瞬発力、発想力が優先され、すさまじい勢いでシーンが流れていくかと思います。

台詞を口の中で反芻して最適なものにする、頭の中で一つ一つの事象から言葉を構成して紡いでいく、自身のキャラクターが他人に動かされる事を嫌う、物語の道筋の綺麗さを何よりも優先する、シナリオの構成とそこから来る展開がTRPGの醍醐味だと感じる、TRPGの楽しさはシナリオが大半を占める、TRPGはGMがシナリオ提供する物。TRPGに対してこれらの考え方を持っている人は、このルールはその真逆の位置にある物だと思って良いかと思います。これらのスタンス・考え方が良いか悪いかという話ではなく、1つの楽しみ方で特化したルールというだけです。

本ルールを遊び、感想、要望、疑問点などがありましたらお気軽にtwitterや掲示板にてお気軽に連絡ください。

aoringo(@moeringo)さん | Twitter

GM マスタリングアドバイス

本ルールでGMをする場合のアドバイスを少し。

俯瞰する視点を持つ

dixit TRPGでは、GMは基本的にPLとして行動します。逆に言うと、物語は語り手が考えてくれるので、それをどういう風に戦闘へつなげるか、結末へとつなげるかをゆっくりと考える事ができます。語り手への立候補も極力せず、他参加者に任せ、物語を楽しむようにしましょう。

セッション全体の最終決定者として、リーダーとして振る舞うくらいでちょうどいいかと思います。参加者が特に迷わず動いてくれるならGMはGMとしての仕事を一切行わなくて良いです。判定に大失敗をしたり、次の展開などで語り手が困っているようなら「引き継ごうか? 気軽にやっていいからね。いざとなったら全部私になげていいよ」と安心させる事が大切です。

実際、GMは一切物語に対して思考をしなくて良いので、語り手が困ったときにすぐ引き継げるように準備だけしておけば良いです。メタ的な視点で次どうしたら良いのか、と考えておくようにしましょう。言葉にすると難しそうに見えますが、やってみるとかなり楽な事がわかります。物語を考える事自体の負担は他参加者に任せられるので、皆のセーフティとしてだけ機能するように準備しておきます。

キャラクターとして物語を誘導する

本ルールでは、PCとしてセッションに参加出来ます。セッションに参加する他PCが、先導して動く性格ではなかった場合、積極的に先陣を切るようにしましょう。言葉のチョイスとして悪いですが、捨て駒と割り切り、フラグをどんどん打ち立てるくらいの動きをしていると、今後の物語の展開も語り手達が想像しやすくなります。

また、最初の合流シーンでも、皆が手間取るようであれば皆をつなげる役に回るといいでしょう。

判定や選択などで、参加者が迷っている場合も自分が語り手じゃないなら積極的にどちらかに一票を入れ、セッション全体のテンポをコントロールするようにしましょう。

折を見て顔を出す

システムごとにある、シナリオ中一回はあったほうがいい特殊なアクション。例えばネクロニカの狂気判定などは、語り手から仕掛けるのは難しかったりします。ある程度時間が立ち、それらのアクションが行われなかった場合、GMはシーンの継ぎ目で顔を出し、それらのイベントを起こしてあげるといいでしょう。

そろそろこれがあると良いな、そろそろあれがあると良いな。というセッション全体を俯瞰しながら短めなイベントを設置することで、セッション自体の楽しさを高める事ができます。

また、秘密会話、紙を渡すなどして、折を見てGMへと手綱を渡してもらいスムーズにそれらのイベントを起こすことも可能かと思います。

ルールに縛られない

dixit TRPGは、あくまで参加者全員で物語を動かす楽しさを体験するための追加ルールに過ぎません。セッションが面白く転がっているなら、別に新しいカードを出す必要もありませんし、ルールでこう決まってるからこうしないとだめ、といったような事もありません。

あくまで物語を楽しむために作った取り決めにしかすぎません。GM自身がこのルールに縛られないように注意しましょう。

どうしても収拾がつかなくなった時のセーフティ

PCが全員バラバラに動き出した、語り手ではどうも収拾がつかなくなってきた、物語が動かなくなってきた。そういう時は、dixit TRPGの運用を辞め、GMとして一端物語をストップしてしまいましょう。その後状況を整理し、dixit TRPGのルールを破棄し通常通りセッションを再開しましょう。場合によっては巻き戻しなども行う必要があるかもしれません。

dixit TRPGは凄く限定的なセッションを行うためのルールのため、これ以上は無理そうだと思ったらすぐにルールを破棄できるように準備しておきましょう。とはいえ、基本的にはこんな事は一切起こらないでしょう。

本ルールの参考にしたゲームたち

ここで、本ルールを組み上げるにあたり参考にしたゲームの紹介をします。どれもそれぞれ素晴らしいルールであり、多分に影響を受けました。是非手に取り、遊んでみてください。

物語ポイントを使った若干ゲーム的な要素やカードを使った大喜利的な部分はボードゲームから。GMレスにするための根本機構はTRPGから発想を得ています。それぞれから色々とエッセンスを抽出し、汎用的に運用できるように組み上げました。

TRPG – 深淵
深淵 第二版 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)
夢歩きルール、渦型という遊び方、PLからの物語への影響という面から参考にしました。

TRPG – Fiasco
フィアスコ日本語版公式サイト
手番制を採用して、手番の人がGMになるというGMレスルールを参考に。

TRPG – レディブラックバード
公開TRPGルルブ「レディブラックバード」 スチームパンク逃避行
プレイヤーが危機に対してキーワードを使いロールプレイを紡いでいく。ナラティブ系のコアな部分を参考にしました。

ボードゲーム- dixit
ディクシット 日本語版
もちろんdixit自体のゲームルールも大いに参考にしています。全員でカードについて考え、皆で物語を作り上げる部分はdixit自体のルールを参考にしています。

ボードゲーム – ウィンターテイルズ
ウィンターテイルズ:冬物語 日本語版
カードをプレイし、その抽象的な絵柄から物語を考えてつなげていくという部分を参考に。コアのTRPG的な部分はとても参考になりました。

ボードゲーム – ワンス・アポン・ア・タイム
カードゲーム ワンス・アポン・ア・タイム日本語版
カードをプレイしてその単語で物語を組み上げていく。ゲームのテンポ感、綱引き感を取り入れられないかと参考にしました。


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